安藤由香里:国際平和協力業務に携わる女性たち

HOT!国造りと女性の参画~南部スーダンの住民投票(第6回)

安藤由香里

安藤由香里(あんどうゆかり)
内閣府国際平和協力本部事務局 
国際平和協力研究員

2011年1月9日~15日、20年以上におよぶ内戦後の包括和平合意(CPA)に基づいた、南部スーダンの帰属を問う住民投票が行われました。統一か分離独立かという、一国の命運を決定する場に女性たちはどのように参画したのでしょうか。南部スーダンへ住民投票の監視団員として派遣された安藤由香里研究員にインタビューしました。

Q. スーダンの女性の生活ってどんな感じですか?

今回は南部スーダンのジュバを中心に監視活動をしました。南部スーダンの女性はとてもよく働いており、子だくさんなので、なかなかお母さんが遠くまで有権者登録に行けないのが現状です。だから当初有権者登録に女性が来られるようにと、南部政府が数日間休日にしました。そうすることで、お父さんが子どもを見ることができ、空いた時間に有権者登録に来ることができたそうです。

Q. 先進国では仕事をもっていて、かつ子どものいる家庭をもっている女性の労働時間が一番長いとの統計(ISSP2002 -"Family and Gender Roles III"-ZA No. 3880)がありますが、状況は南部スーダンでも同じですね。

ええ、今回の住民投票に女性が積極的に参加できるような措置は多くの点で取られましたね。国連なども、女性の有権者教育といった取組みをしていました。また、コミュニティレベルでは、住民投票のキャンペーン用テーブルクロスを制服として腰に巻いた女性がコミュニティをまわり、家事で忙しい女性たちに住民投票へ行くように啓蒙していました。こういった多くの取組みが功を奏して、南部の有権者登録者数の52%は女性でした。

投票の様子

Q. 素晴らしいですね。もちろん投票権のある女性のうち、実際何%の女性が投票したのかという点からも見なくてはならないのですが、女性の住民投票にかける意気込みを感じますね。

実際に住民投票期間中も多くの女性の姿を見かけましたが、みんなここぞとばかりに着飾ってきていました。お祭りイベントのような雰囲気でしたね。印象的だったのは有権者登録票をまるで宝物のように扱うのです。発行されてから住民投票の日まで大切に保管していたのだと思います。しっかりと布に巻いて大切に持ってきて、誇らしげに投票所スタッフへ差し出していました。

Q. 私たちもその一票の重さを見習わなきゃいけませんね。

そうですね。もうひとつ忘れられないのは、ある投票所で見かけた女性です。登録票を誤ってごみと一緒に燃やしてしまったようです。投票に来たけれども、登録番号部分が燃えてしまって、名前もかろうじて見える程度では、何らかの措置を取らない限り投票ができないのを知って、投票所のわきでうなだれて座り込んでいました。

投票の様子

Q.『日本政府監視団による評価と提言』が2月に発表されていますが、少数ながらも女性が投票所長として起用されていたとされていますね。

確かに女性の参加は多角的でした。私が今回の住民投票監視団に参加を希望した理由は、住民自身が国の未来を決定できるプロセスに関心があったからですが、女性が国造りにかかわる意義は大きいですね。一票を投じるだけでなく、住民投票のプロセスを運営していく側にも積極的に参加するといったような。

Q. 今回住民投票監視のために日本団が使用したチェックリストは女性の参加についての項目がありましたが、チェックリストも改良を重ねて、ジェンダーについての視点が入りましたね。監視をされる側のみならず、する側にもジェンダー観点はほしいところですよね。

そうですね。たとえば監視団が現地で働くときはそれぞれの比較優位があると思います。チーム編成にしても、安全面から現場に出るときは女性二人が組むよりも男女二人がチームとして組むように心がけました。また、私は女性ということで、投票する人に男女関係なく話しかけやすく、また相手側も若干緊張感がほぐれるといったような気がしましたね。

Q. カイロに留学中、同居していたエリトリア人の母娘が独立したばかりの故郷に“帰国”するのについて行ったことがあるそうですね。今回の住民投票の結果、南部スーダンの分離独立が決定されましたが、エリトリアの独立時と比べてなにか思うところはありますか?

簡単に比較ができる問題ではありませんが、ひとつ言えるのは、“自分の国”をもつことに対しての喜びですね。文字通り、その喜びの度合は計り知れません。今回は暫定結果でも分離独立の選択がはっきりしていたので、多くの南部スーダンの人がお祝いムードでした。もちろん国を造り上げていくということは、単に喜んで、その後傍観していればいいものではなく、対処しなくてはならない問題をひとつひとつ解決していかなくてはなりません。エリトリアの国造りのあり方がそのまま、スーダンにあてはまるわけではありませんし。

Q. そうですよね。国造りってたくさんの関係者がかかわってきますし、南部スーダンの女性には引き続き積極的に国造りのプロセスに参加してもらいたいですね。また日本もこれまでスーダンに関わってきました。これからもスーダン、南北と二つになりますが、かかわっていくことになります。その中で日本人女性の活躍も多面的になりますね。

今回の住民投票のために立ち上げられた国連事務総長ハイレベルパネルを支援するスタッフのトップは日本人女性でした。女性はそれぞれの分野でそれぞれの立場から、住民投票に関わってきましたし、日本政府が派遣した住民投票監視団15名中女性は5名でした。これまでも多くの女性がスーダンに関わっており、これからもそうであってほしいと思います。

2011年2月18日、事務局にて
聞き手:国際平和協力本部事務局研究員 新野智子

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)