山崎明子:国際平和協力業務に携わる女性たち

国際平和協力業務に携わる女性たち(第4回)

山崎明子

山崎明子(やまさきあきこ)
外務省中南米課カリブ室

  • いま休みが取れたら?
    →自然のなかでのんびりしたい。
  • 直したくない癖は?
    →大声で笑うこと。
  • 尊敬する理想像は?
    →覚悟のある人。

Q. 9・11の際私はカブールにいたんですが、歴史の道筋はこんなにも簡単に変えられるものかとびっくりしました。山崎さんも、似たようなご経験をされたとか?

レバノン大使館で専門調査員として経済協力を担当していたんですが、2006年にレバノンで紛争が表面化したんです。レバノンは複雑な国民の分裂があって、紛争の火種を常に抱えている国なんですね。それまでは分裂していたかと思えば、あっという間に融和したり、また分裂状態に戻ったりを繰り返していたんです。急展開で紛争の勃発を目の当たりにして、ああ、紛争ってこんな簡単に始まっちゃうんだなと。レバノンの発展のために経済協力を一生懸命行っていたのに、紛争はそれらを一瞬にして台無しにしてしまうのだと。やるせない気持ちになりました。

Q. フィールドでは机上で習うことがそのまますんなりとは通じない、その発見に習うところは多いですよね。現在は中南米課カリブ室の外務事務官でいらっしゃいます。日本はハイチのPKO(MINUSTAH)へ要員を派遣している関係で当PKO事務局とも関係する業務を担当されていますが、外務省でのご自身の業務はどういったものでしょうか?

外務省では,ハイチを含めカリブ諸国の8カ国との外交関係を担当しています。各国の政治・経済情勢等を把握し,我が国としての外交方針を策定することが主な業務です。日本はハイチに対し、色々な支援を行っていますが、日・ハイチ関係の強化のみならず、ハイチに高い関心を有する米・加・国連などとの関係強化にも有効ですので,色々な機会を通じアピールすることが重要です。また、PKO事務局とのお仕事では、事務局が調整している派遣前研修で、派遣されるPKO要員にハイチの現地情勢についてブリーフィングを担当しています。

Q.MINUSTAHへのPKO要員の派遣ですが、現在約330名の自衛官が国際平和協力法のもとに国際平和協力隊員として活躍しています。派遣決定から実際の派遣までかかった時間がおよそ2週間という、とても迅速な対応をしました。

レバノンの国連PKOUNIFIL)(注1)には中国や韓国の軍事要員が人的貢献をしていて、個人的には日本も、こういった人的貢献ができればいいなと思っていました。中南米課カリブ室での勤務も3年たって、大規模なPKOミッションが展開されているハイチに大地震が起こり、日本の派遣が決まったときは感慨深いものがありました。初めは大変でもとにかく出てしまうことがいいのかもしれません。

Q. そうですね。中国は地震以前からMINUSTAHに人員を派遣していました。また地震後は韓国と日本が東アジアからハイチに駆けつけました。遠い国ですが、日本は地震国。自衛隊の災害救援活動は国内ではすでに多くの方の目に触れていますが、ハイチのように遠い国からのメディア報道は限られていますよね。

ハイチに派遣されている部隊は、とても評判がいいんですよ。たとえば二国間の会議だったり、日本から要人が訪問した際に、政府や国連、また他の部隊などから、日本の貢献について言われます。実際に彼らが請け負っている業務は、震災によって影響を受けた建物の解体や瓦礫の撤去、整地など、地味なものが多いですが、みなさんからの“ありがとう”が実感できることが多いんです。

Q.MINUSTAHでも、特に軍事部門は南米国からの派遣部隊が多くて、軍事部門トップの司令官もブラジル人ですね。異文化の中で、日本人が孤立しているということはありませんか?

災害支援に関わる仲間としての意識は強いようですね。他国部隊との連携業務もありますし。確かにラテン色が強いかもしれませんが、現在18の部隊が世界中から出ています。そんな中で、日本は規律がしっかりしていて、とても模範的だとされているんです。

Q. なるほど。話が変わりますが、今年の3月8日は100回目の国際女性デーです。女性の人権にかかわる現代的な課題に国際社会が対応する形で、近年国連安保理における決議が複数採択されています。たとえば1325号(注2)では、女性の平和構築への参画が明記されました。平和構築という観点から、ハイチの復興においてハイチ人女性がもっと積極的に関われるとしたら、どんなところでしょう?

人道支援において、女性の経済活動や教育など、女性に投資すると家族に利益が還元されて地域社会が得るものが多いといいます。ハイチのような国で女性のエンパワメントが進めば、社会が得るものがとても多い気がしますね。たとえばレバノンでは女性の雇用促進のために、男性中心の仕事であった養蜂などの職業訓練を支援しました。これは男性・女性領域のバリアを超えるのみならず、宗教的に分断された地域のボーダーを超えるものとして効果を発揮しました。女性として一緒に男性領域での職業を覚えるという、一種の連帯感が生まれたんですね。分断されている地域の友好促進に寄与しているということで、彼女たちにもいい刺激になったんです。もちろん、女性の収入はより確実に家族へ還元されますし。

西半球の最貧国ハイチは、持てる者と持たぬ者との格差がとても大きい国ですよね。確かにこういった国際社会からの支援は今後も必要ですね。

(注1)UNIFILhttp://www.un.org/en/peacekeeping/missions/unifil/index.shtml別ウインドウで開きます

(注2)1325号:http://www.unic.or.jp/files/s_res_1325.pdf別ウインドウで開きます

編集後記

「あ、あの綺麗なひとですよね!」昔の同僚(男性)に言わせた才色兼備。長い手足とまっすぐな前髪。静かな外務省のカフェに山崎明子さんの笑い声が響く。大きな声で笑うのを抑えられないらしい。とても印象的なひとだ。開口一番、「相変わらず走ってますか?」そう、ハイチにいた頃、よく友人兼ボディーガード(ボディガード兼友人か?)と一緒に走っていたっけ。日が落ちる前の30分が勝負だった。地震で様変わりした支援のあり方は表面のみ。地震以前からPKOが展開していたハイチの問題は根深い。どのように国際社会がかかわっていくべきか。インタビューをはずれて、ハイチ談義が2時間続いた。

2011年2月28日、外務省にて
聞き手:国際平和協力研究員 新野智子

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