竹田妙子:国際平和協力業務に携わる女性たち

国際平和協力業務に携わる女性たち(第6回)

竹田妙子

竹田 妙子(たけだ たえこ)1等陸尉
国際平和協力隊員
国際連合ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)派遣要員

  • いま休みが取れたら?
    →温泉に行ってお刺身を食べたい
  • 直したくない癖は?
    →ジョギングをしたくなる癖
  • 尊敬する理想像は?
    →裏表のない人

Q. 現在メンタルヘルスのカウンセラーとしてハイチに派遣されていますが、メンタルヘルスとはどういったものですか?

 簡単にいえば、隊員の悩みや不安を聞いて、症状が出る前に予防することです。特に海外に派遣される自衛官は、さまざまなストレスにさらされています。それが原因で業務に支障が出ることもありえます。その予防策としてストレスマネージメントの方法を教育したり、啓発したりすることが私の仕事です。欧米ではカウンセリングは目標を達成するための一つの支援・手段ととらえられています。

Q. カウンセラーとしてどういったことに気を付けていますか? またやりがいはどういうところに感じられるのでしょうか?

 隊員の気持ちを理解するために、ダンプカーに乗りこんで現場に出たり、宿営地を巡回して隊員に積極的に声をかけたりしています。
 カウンセリングは非常に難しい職業で、カウンセラーの中には自分自身が潰れてしまう方も少なくありません。その理由の一つは、外科手術のように「人の怪我を治した」というわかりやすい成果がえられないため達成感を感じることが難しいからです。ただ、そんな中でも、カウンセリングをしていた隊員からたまに連絡をもらったり、巡回に行けなかった日など、「今日は来なかったね」と言われたりすると、手ごたえを感じます。

Q. ところで、自衛隊のメンタルヘルスのカウンセラーは女性が多いのでしょうか。

 半々ぐらいです。やはり自衛隊員は男性が多いですから、性差があると話しやすい、女性が話し相手だと弱い部分を見せやすいという所はあるのではないでしょうか。
 また現在ハイチに派遣されている部隊には女性自衛官が私を含め6名おります。私以外はカウンセラーではありませんが、男性隊員だけでは生まれない明るさを生み出して、部隊内の潤滑油となっている部分があると思います。
 ちなみに、米軍では、駐屯地に教会が作られており、牧師さんがストレスコントロールの役割を担っています。それぞれの国で同じ役割を持つ職業というのがあるのかもしれませんね。

メンタルヘルス教育の様子

Q. 日本では、東北地震対応に自衛官が派遣されているなど、カウンセラーの重要性が見直されています。

 今回の地震には、ハイチにいる日本隊も衝撃を受けました。今すぐ帰るべきではないか、と思っていた隊員もいたのではないでしょうか。
 地震が起こった直後は、世間の注目や危機感もあり、なんとか頑張り続けることができると思います。でも大切なのは、半年とか一年経った後で、あまり注目されなくなり、それでも問題は引き続き山積している状況の中で、自衛隊が冷静に対応できるか、というところだと思います。今ハイチにおいても日本隊330人は、こんなストレスの溜まる状況のなかでうまく自分たちをコントロールしながら任務を行っていて、強くなっていると思います。だから、日本に戻って時差ボケを治して、体力を回復しさえすれば、この330人はいつでも出動できるんだと、必ず役割を果たせる時が来ると、隊員たちには言っています。そして、それが今できる私の役割だと思っています。
 ただ、やはり今回の地震を遠くから見ているのは切なかったですね。それでも被災後の日本人が略奪や暴動を起こさず、落ち着いた対応をとっている姿を見て、日本人であることを誇りに思います。

Q. 竹田さんを含め、部隊の皆さんは慣れない海外勤務でストレスを溜めていると思いますが、どうやって発散していますか。

 隊員はジョギングや、DVD鑑賞や家族とのスカイプ(TV電話)等で発散しています。私の発散方法も、やはりジョギングです。高校時代に陸上部で800メートルの選手だったんですが、そのときは走ることが本当に嫌でした。でも、イラク勤務の時に、普通科の隊員たちが暑い中を走り続けていたんです。それを見て、自分は2尉でしたし、幹部として自分も走ろうと思いました。それからは、自衛隊には毎年体力検定があるんですが、そこで1級をとって方面隊で1位になることを目標に頑張りました。それ以後、検定では1級をとり続け、5年前には中部方面隊で2位になりました。腕立て伏せは、2分間に50回ぐらいは、軽くできますよ。

宿営地外 施設活動現場にて施設中隊長に随行

幹部の意気込みのようなものを感じますね。幹部とはどういう存在ですか。

 幹部には多かれ少なかれ必ず部下がいます。その部下たちと一緒に現場で働いて、その状況をよく確認し、現場の意見を吸い上げて、不備があれば改善して、部下達を守るというのが幹部の使命だと思います。
 私は、平成16年3月に、当時の看護師としては珍しく、部隊で勤務する機会がありました。第三後方支援隊というところに配属されたのですが、部隊のことなんて何も知らない私が幹部として、2尉の階級で突然10名ほどの部下をもつことになったのです。そこでその部下たちと一緒に仕事をしたのですが、それまではただの看護師ですから、最初は上司として認識されませんでしたね。それで、幹部として自分にできることは何か、を問い続けて。そこでその使命感みたいなものが培われたのだと思います。
とはいえ、初めは足を引っ張ってばかりでした。現場で、整備のために車両の下にもぐったり、機材を運んだりして一緒に汗を流して働いていたのですが、「機材が重くて運べない、ネコ借りてきてください」と言われ、真顔で「何匹ですか?」と答えたこともあります。ネコというのは猫車(台車)のことなんですね。「本気で言ってるんですか?」と呆然とされてしまいました。でもそうやって現場で一緒になって働いているうちに、彼らも私を信頼してくれたようで、何も言わなくても黙々と精一杯働いてくれるようになりました。

桃の節句において 派遣隊女性自衛官全員と竹田妙子(派遣隊看板をバックに)

編集後記

 竹田さんは話していてとても楽しい方で、インタビューの2時間があっという間でした。ここには出てきませんが、一緒に派遣されているご主人の話やご家族の話もざっくばらんに話してくれました。その柔らかい雰囲気に加えて、他人を細やかに思いやる優しさと、たとえ喧嘩をしてでも部下を守るという真摯で毅然とした覚悟が爽やかで印象的でした。インタビューの後、心がすっきりと、とても晴れ晴れとした気持ちになりました。

2011年5月2日、ハイチにて
聞き手:ハイチ連絡調整要員 森田陽

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