現地からの声:仲間と目標

平成23年8月
UNDOF先任兵站幕僚
 3等陸佐  六反(ろくたん) 洋一朗

 国際平和協力活動で充実感を感じるとき、私にとってそれは国籍や軍民の壁を乗り越えて仲間と目標を共有し、それを達成したときです。
 UNDOFは、約1,200名の軍人及び文民からなる比較的小規模な国連PKOで、1974年以降36年間にわたりゴラン高原においてシリア及びイスラエル間の停戦監視及び兵力引き離しなどに関する合意の履行状況の監視にあたっています。我が国の派遣輸送隊は、UNDOFの活動に必要な日常生活物資の輸送のほか、雨や雪でぬかるみ状態になる道路の補修や、標高2,800メートルを超える高原地帯での除雪作業などの後方支援業務を行っています。我が国からは派遣輸送隊のほか、UNDOFの司令部に私を含む3名の自衛官が約1年交代で個人派遣されており、配置されているそれぞれの部署で他国の軍人や文民とオフィスをともにし、UNDOFのマンデート達成のために企画・調整等の幕僚活動に従事しています。

上司の指示を聞き漏らすまいと必死の(?)筆者img

上司の指示を聞き漏らすまいと必死(?)の筆者

 私は、平成23年2月以来、ISSIntegrated Support Services、統合支援部)というUNDOFの後方支援全般を担当する部で先任兵站(へいたん)幕僚として勤務しています。ISSは、輸送、補給、施設、地図情報、医務の各課及びそのとりまとめを担当するISSコマンドから構成されており、私はISSコマンドにおいて文民の部長、軍人の副部長のもと、主に部内各課の総括業務に従事しています。各国部隊からの後方支援に関する窓口ともなっており、軍民国籍問わずあらゆる人と接することができ、充実した日々を送っています。

 これまでの業務で印象に残ったものの一つに、兵站(へいたん)検査というものがあります。UNDOFの活動する兵力引き離し地域の中には2つの宿営地と21の陣地があり、これらの全てに各国の隊員が居住し、監視任務等の業務に従事しています。兵站検査の目的は、全ての宿営地・陣地を数日間かけて巡回・検査し、規則に基づく業務の履行状況を確認するほか、各国部隊の抱える問題点をヒアリングし、後方支援上の施策に反映させることにあります。私は、検査の企画・立案を担当するとともに、検査チーム長として各課からの検査官とともに各国の全ての陣地等を訪問しました。

検査風景(その1)img

検査風景(その1)

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検査風景(その2)

 陣地に検査に訪れると、建物の損傷や補給品の不足、要整備機材の放置などがみられることも少なくありませんでした。私が、「なぜこの状態を放置しているのか?」と尋ねると、答えの多くは「手続きがわからない」「司令部に要望しているが時間がかかっている」といったものです。各国部隊は約6ヶ月で部隊交代しますから、部隊が国連のシステムや規則に不案内なのはある程度致し方ないのかもしれません。また、予算や市場の状況などの様々な要因により、現場の部隊が要望するサービスを司令部から提供されない場合も往々にしてあります。検査では、そういった問題に改めて光を当て、部隊へ丁寧に手続きの説明を行ったり、検査チーム皆で問題の解決方法を議論しました。  

 検査後、程なく、各課の努力により少しずつ改善がなされていきました。例えば、ある部隊の兵舎には真新しい家具やテレビ、ソファーが備え付けられ、また雨季の泥濘化に困っていたある陣地には排水設備が整いつつあります。管理の不備を指摘したある部隊の倉庫は、見違えるように整頓され作業効率も向上しました。

 「検査」と名のつくものは面倒で、万国共通で皆が嫌がるものです。受検部隊はもちろん、各課からの検査官も忙しい恒常業務のなか何日もオフィスを空けなければならず、当初は思うように協力が得られず苦労しました。自らの国連規則の不理解や各国の文化の壁、軍人と文民の組織文化の違いにも悩まされました。しかし、検査やその後のフォローアップにより、勤務環境や生活環境の改善がもたらされていくのを見るにつれて、最後の部隊の検査終盤には検査官達もより積極的に取り組んでくれるようになったと感じました。私にとってこの検査は、「国籍や軍民の壁を乗り越えて仲間と目標を共有し、それを達成したとき」の充実感を感じさせてくれるきっかけとなったものでした。 

検査結果のブリーフィングimg

検査結果のブリーフィング

検査チーム、受検部隊とimg

検査チーム、受検部隊と

 今回ご紹介した内容は業務の一端に過ぎませんが、他の広範な仕事についても先任兵站幕僚としてUNDOFの活動を後方からしっかり支えるため、たくさんの仲間達と目標を共有しつつ、残りの派遣期間も一層努力して参りたいと思います。

参謀長からの表彰img

参謀長からの表彰

(平成23年8月8日 ゴラン高原にて)

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