現地からの声:ハイチ復興に向けた歩み

国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)兵站幕僚
1等陸尉 大隈 清司

1 はじめに

 30万人以上が亡くなった2010年1月に発生したハイチ大地震からの復興のため、日本は震災後速やかに自衛隊を派遣して支援を継続してきました。2年半以上にわたる支援活動の結果、自衛隊はハイチの復旧に十分に貢献したものと評価し得ることから、本年10月中旬を目途に施設活動を終了し、その後撤収作業を進めることが決定されました。私は2012年3月から国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)軍事司令部の兵站幕僚として勤務し、もうすぐ半年が経過しようとしています。その間、少しずつではありますがハイチの復興を肌で感じることができました。そういった喜ばしい変化を、「現地からの声」としてお届けします。

2 兵站幕僚の業務

  MINUSTAHの活動は2004年から継続されているため、兵站(物資の補給や輸送等)に関する業務の系統は確立されていると言えます。しかしながら、例えばデモによる道路封鎖によって物資輸送の遅延が発生した場合等、通常の流れでは対処できない事態が多々発生します。私の仕事は、そういった不測事態にどのように対処するかといったことが主となっています。諸外国部隊と業務の調整をするときは、言葉の壁や考え方の違いといった要因で予想外の行動をとられたりもしますが、そんな部分も楽しみながら業務ができるようになりました。

スリランカ歩兵大隊長から記念品を頂きましたimg

スリランカ歩兵大隊長から記念品を頂きました。

  また、2012年5月以降、準軍事組織の掃討作戦や武器回収のための検問所の設置等、MINUSTAH内の警察部門と軍事部門とが共同で作戦を実施する機会が増加したため、各国軍以外の組織とも兵站に関して調整することができ、大変良い経験になりました。

警察・軍事部門共同による兵站偵察img

警察・軍事部門共同による兵站偵察

  我が国が派遣している司令部要員の任期は約半年間ですので、要員の交替日程に関する話をしたところ、同僚から「延長してもらえないか?」と言われ、本当に嬉しかったです。各国の部隊から感謝されることも嬉しいですが、同僚に認められた喜びの方が大きかったです。

同僚からバースデーカードをもらいましたimg

同僚からバースデーカードをもらいました。

3 国内避難民キャンプの状況

  地震発生当時、150万人以上もいた国内避難民は、2012年7月現在約39万人にまで減少しています。約75%も減少しているとはいえ、まだまだ多くの人達がトイレや排水の整っていない劣悪な環境で生活しています。これらのキャンプ内ではギャングによる犯罪が絶えず、歩兵部隊が24時間体制でパトロールを実施しています。

ブラジル歩兵大隊によるパトロールimg

ブラジル歩兵大隊によるパトロール

  このような事態を踏まえ、ハイチ警察にギャング対策部隊が設置されることになりました。多くの警察官がこの部署での勤務を希望して国連警察(UNPOL)による体力検査を受けており、キャンプ内の安全化に向けた意欲の高さを感じることができました。

UNPOLによる体力検定の様子img

UNPOLによる体力検定の様子

  他方、MINUSTAHNGOとの連携により、快適な生活環境を手に入れた人達もいます。小さいながらも綺麗な家が立ち並び、通りには太陽光発電によって街灯が灯り、軍事部門による給水・医療支援も実施され、ここに住んでいる人達には笑顔が溢れていました。過酷な環境で生活している人達全てがこのような住居に移れるよう、日々支援活動が実施されています。

整然と立ち並ぶ住居img

整然と立ち並ぶ住居

ボリビア歩兵中隊歯科医師による診察img

ボリビア歩兵中隊歯科医師による診察

4 ハイチ警察に対する教育訓練

  ハイチでは交通マナーは無いに等しく、無理な追い越しをされることもしばしばです。整備不良で、かつ速度超過のトラックが無理な追い越しをしてブレーキが利かなくなり、悲惨な事故を起こしてしまうこともあります。また、少しでも渋滞すれば反対車線に出てまで追い越そうとする者が次々と現れ、新たな車線が発生します。これを繰り返して、片側1車線の道路に5車線もできたことがあります。反対側でも同様の事態が発生しており、通常10分程度で通行できるところに3時間ほどかかることもありました。

電力不足解消を求めたデモによる渋滞img

電力不足解消を求めたデモによる渋滞

  そこで、UNPOLはハイチ警察とともに飲酒運転や速度超過を取り締まる訓練を始め、ハイチ警察官が交通整理をしている姿もよく見かけるようになりました。安全のために、良いマナーが広がっていくことを期待しています。

呼気検査の訓練中img

呼気検査の訓練中

5 職業訓練

  日本隊は「絆(きずな)プロジェクト」という職業訓練プログラムを通して、ハイチの人々に施設器材の操作要領を教育しています。同様にハイチ政府も道路補修の要領を教育し始めました。この他にもNGOによってはパソコンの操作教育を実施しているところもあります。MINUSTAH内においても現地スタッフに対するパソコンの操作教育があり、誰もがこぞって参加しています。

損壊した道路を修復する要領を訓練中img

損壊した道路を修復する要領を訓練中

6 おわりに

  東日本大震災からの日本の復興と比較すると、ハイチの復興速度は非常に緩やかであり、雇用問題や電力不足等々長期的な視点で解決すべき問題は山積しています。しかし、新首相も選定され、年末には1年以上遅延していた地方選挙も実施される予定であり、これから徐々に機能的かつ民主的な政府が樹立され、これらの問題解決に向けて努力していくことでしょう。近い将来にハイチに平和と安定が確立され、MINUSTAHの活動が終了する日が来ることを期待します。そのときに初めて、MINUSTAHは成功したと言えるでしょう。

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笑顔溢れる子どもたちと。

 平成24年8月

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