現地からの声:建国2年目を迎えた南スーダンの現状と兵站幕僚の業務

UNMISS司令部要員(兵站幕僚)
3等陸佐 古滿 裕一郎

1 はじめに

 私は平成24年5月26日に日本を出国し、UNMISS(国連南スーダン共和国ミッション)第2次司令部要員(兵站幕僚)として南スーダン共和国の首都ジュバにおいて勤務しております。早いもので勤務を開始して5ヶ月が過ぎましたが、本邦からの温かいご支援と同僚の親身な援助のおかげもあり、元気に勤務しております。今回は投稿の機会をいただきましたので、南スーダンの現在の状況やUNMISS兵站幕僚の業務などについて、私見を交えて紹介したいと思います。

執務室にてimg

執務室にて

2 南スーダンの状況

 (1) 気候

  南スーダンの気候は、雨季(4~10月頃)と乾季(11~3月頃)に区分されるサバナ気候で、ちょうど現在(11月)は雨季から乾季に移行する時期です。雨季と言いましても日本の梅雨のような天候が続くわけではなく、ジュバにおいては3~4日に一度くらいの割合で1~2時間程度の激しい雷雨が、時間帯としては日没後や明け方に多く発生します。雨季の気温は東京の夏と同じかそれよりやや低いくらいでしたが、乾季には日中の気温が40度以上になるとのことで、数ヶ月前に比して気温も上がってきましたし、雨の降る間隔も開いてきましたので、雨季の終わりが近づいていることが感じられます。
 幸いジュバでは降雨による影響を受けることは少なくてすみましたが、北部には「スッド」と呼ばれる湿地帯があり雨量も多いため、道路は写真のような状況になって閉鎖されているところもあり、物資の輸送は航空機に頼らざるを得ません。

北部の道路状況(ぬかるみに足を取られてうまく歩けません。車両もすぐにはまります。)img

北部の道路状況(ぬかるみに足を取られてうまく歩けません。車両もすぐにはまります。)

(2) 治安状況

  南スーダンの治安について危険なイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、ジュバ市内においては、窃盗などの軽犯罪はあるものの、凶悪犯罪や国連職員等をターゲットとした犯罪の発生は無く、治安は安定しています。実際、一人で出歩いたり、宿舎周辺でランニングをしても特に危険を感じるようなことはありませんので、夜間の外出及び国連から示された立入禁止地区を避ければ比較的安全と言えます。しかしながら、現地人であふれる中に日本人のような異人種が入れば明らかに浮きますし、周囲からの視線を強く感じます。ここは日本とは違うということを忘れず、油断しないことを心がけています。

(3) 生活環境

  派遣されている3名の司令部要員は、ジュバ市内のホテルを宿舎として生活しています。ホテル暮らしと言いますと贅沢に聞こえますが、日本のホテルのイメージとはほど遠く、エアコン、トイレ、温水シャワーはあるものの、テレビや冷蔵庫はない粗末なものです。しかしながら、警備上の問題もなく、質・量ともに満足できる食事が提供され、日本の家族とインターネット回線でTV電話をすることも可能な通信環境(速度は遅く、しばしば不通になりますが…)も整備されており、特に不満は感じません。到着した時はまるで演習場の宿泊施設のような外観に衝撃を受けましたが、住めば都です。

ホテルの外観及び室内img

ホテルの外観及び室内

(4) ジュバ市内の状況

  開発途上国のイメージとは裏腹に、ジュバ市内のマーケットには食料品から電気製品に至るまで多くの商品が並んでおり、銘柄や品質にこだわらなければ大抵の生活用品は現地調達が可能です。全般的に物価は安いですし、交渉を必要とするような法外な値段を言ってくることもありませんので、現地にお金を落とすことも南スーダン経済の発展につながるとの思いで、私は言い値で買い物をするようにしています。
 また市内には外国人向けの飲食店が多数あり、中華料理やイタリアンのほか、ケニアの日本料理店で修行を積んだシェフによる日本食も味わうことができます。現地のビールも種類が豊富にあり、外食はジュバでの生活における楽しみの一つになっています。
 一方で、ジュバでケガをする、或いは最悪命を落とすことがあるとすればその原因は交通事故と言っても過言ではないほど交通状況は劣悪・無秩序な状態で、実際に市内では頻繁に交通事故が発生しています。平素の通勤や休日の移動の際は現地で契約したドライバーの車を使用していますが、司令部要員は着任時に国連運転免許を取得し、業務で真にやむを得ない場合は自ら運転することもあり、その時はいつも生きた心地がしません。南スーダン国内に信号はありませんし、歩行者や直進車優先といった概念もなく、ドライバーはみな「自分が優先」と思って周囲を気にせず運転しています。歩行者も物陰から確認もせず突然出てきますし、逆走・すり抜け・突然の車線変更当たり前のバイクタクシー(通称「ボダボダ」)は特に危険極まりない存在です。このような状況の上に、ドライバーの運転技術も高くないため、最大限の防衛運転が必要です。

ボダボダには要注意img

ボダボダには要注意

3 兵站幕僚の業務

  兵站幕僚は、UNMISS軍事部門司令部(Force Headquarters(FHQ))兵站部(J4)に配置されています。FHQは司令官(Force Commander(FC))以下約90名(23カ国)から成る、UNMISSの中で唯一軍人だけで構成される組織で、兵站を所掌するJ4はチーフ(オーストラリア陸軍中佐)、副チーフ(オーストラリア海軍少佐)、部員2名(スウェーデン海軍少佐と私)の計4名で構成されています。その中における私の業務は、南スーダン10州のうち6州(中央・西・東エクアトリア州、北・西バハルアルガザール州、レイク州)に展開する歩兵大隊及び軍事連絡要員の兵站状況の把握と問題発生時の処置、新着任者に対する兵站関係の導入教育が主たるものです。それ以外にチーフからの特命事項として、新たな部隊の展開に伴う装備品点検や整備中の活動拠点の状況確認のための地方出張を行うこともあり、私は西エクアトリア州、レイク州、ジョングレイ州に行く機会がありました。
 派遣部隊との業務上の関係については、UNMISSに派遣された部隊は全てFCの指揮下にありますが、FCが運用権限を有するのは歩兵大隊(インド軍、ケニア軍、ルワンダ軍、モンゴル軍、ネパール軍)に対してのみで、支援部隊に区分される派遣施設隊の運用権者はFCではなくミッション支援部長(文民)になるため、直接的なつながりはありません。しかしながら同じUNMISSという枠内で活動する自衛官として、日本の現地支援調整所や施設隊とは定期的に情報共有を図っていますし、新規部隊の派遣・展開といった他国部隊の動向に関する情報はFHQに集約されますので、情報収集の観点からも自衛官をFHQに配置している意義はあると考えます。
 過去に派遣経験のある人から、いろいろな国から集まっているので仕事に対する姿勢に温度差が大きいという話を聞いたことがありましたが、私が感じた限りではそのような印象はなく、それぞれが誠実に職務を遂行しています。必要があればすぐに会議が招集されて参謀長の統制の下に各所掌ごとに意見を出し合い、最良の案を報告して司令官が決心をするという業務の流れは日本と変わりはありませんが、誰も残業しないのというのが日本との大きな違いでしょうか。

J4の同僚との登山にてimg

J4の同僚との登山にて

ルワンダ大隊宿営地(西エクアトリア州)にてimg

ルワンダ大隊宿営地(西エクアトリア州)にて

4 日本に対する印象・評価

  他のミッションで活動する日本隊が規律・技術の両面で高い評価を受けてきたこともあり、派遣前から施設隊に対しては高い期待が寄せられていましたが、ジュバでも丁寧な仕事ぶりは高く評価され、信頼も厚く、内外の期待にしっかり応えていると認識しています。特にジュバ市内からUNMISS司令部のあるUNハウスに至る道路補修を施設隊が実施した際は、迅速な作業と完成度の高さをFHQ内の同僚が皆高く評価してくれて、非常に嬉しく思いました。
 一方でジュバ市民の認知度はと言うと、市内には日本車があふれている割に、我々に掛けてくる言葉は「ニーハオ」ばかり…。がっかりしますが、これは未だ南スーダンへの日本企業の進出はなく、自衛隊も活動を開始してまだ日が浅いのに対して、中国は南スーダン独立のかなり前から既に進出してその存在感をアピールしてきたという違いによるものだと思います。しかしながら、迷彩服を着ていると「Japan!」と気軽に声を掛けてきますし、施設隊が活動する姿を見ていますので、そう遠くないうちに「コンニチハ」と声を掛けられる時がくると確信しています。

5 おわりに

  今回の南スーダンでの勤務は私にとって初めての国際平和協力業務への参加でしたが、さらに司令部要員として他国軍人とともに仕事をするという大変有意義な機会を与えていただいたことに改めて感謝いたします。
 先般、過去のジュバの様子を知る人とたまたま同じ車に乗り合わせた際、道路も整備され、建物や店舗も増え、2年前に比べると大きな変貌を遂げたという話を聞きました。市内は活気にあふれ、市民は皆友好的、子どもたちも明るい笑顔を見せてくれます。目を輝かせ、希望に満ちた表情をした子どもたちを見るに付け、独立してまだ1年の若いこの国に明るい未来が訪れることを願ってやみません。私の任期も残り1ヶ月となりましたが、発展した南スーダンの姿をいつかまたこの目で見ることができることを夢見て、引き続きUNMISSの一員として南スーダンの発展の一助となれるよう残りの職務に邁進したいと思います。

将来の南スーダンを担う子どもたちimg

将来の南スーダンを担う子どもたち

南スーダンの発展を祈念して万歳!(ジュベル山頂にて)img

南スーダンの発展を祈念して万歳!
(ジュベル山頂にて)

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