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第2回 人間の安全保障@PKOなう!

2012年4月6日
国際平和協力研究員
たなか きわこ
田中 極子

「人間の安全保障」概念の展開

  国連開発計画(UNDP)が発行した1994年版『人間開発報告書』[1]において、国際社会が取り組むべきグローバルな課題として「人間の安全保障」が取り上げられて以降、「人間の安全保障」概念は大きく二つの潮流として発展してきています。一つは、カナダ政府が中心となって展開している「恐怖からの自由」を優先する潮流で、もう一つは、日本政府が積極的に展開している「欠乏からの自由」を包括する幅広い概念としての潮流です。

「人間の安全保障」と「保護する責任」

  「人間の安全保障」の概念を具体化する過程で、2000年、カナダ政府は「介入と国家主権に関する国際委員会」(ICISS)を設置し、「人道的介入」の問題を取り上げ、2001年に「保護する責任」という新概念を提示する報告書を発表しました。(詳細については第5回「保護する責任と国連PKOに続きます。)
  しかし、国連加盟国の中には、「保護する責任」の概念を援用することにより、国家主権の原則を越えて内政干渉に抵触する可能性への抵抗や、「保護する責任」が恣意的に適用される可能性への危惧を抱いていた国もあり、あらためて「人間の安全保障」の概念を検討する必要性が認識されました。そこで、日本政府が中心となり、人間の安全保障委員会を設置し、2003年、同委員会の成果として最終報告書「Human Security Now」(『安全保障の今日的課題』)[2]を発表しました。報告書の中で、「人間の安全保障」は「人間の生にとってかけがえのない中枢部分を守り、すべての人の自由と可能性を実現すること」と定義され、保護と能力強化(empowerment)の双方を重視することを提示しました。[3]
  その後、2005年国連首脳会合で採択された最終文書[4]では、「保護する責任」と「人間の安全保障」は異なる段落で取り上げられ、両者が混同されないような配慮がされています。これは、「保護する責任」が国家主権や軍事的強制力の使用と密接にかかわる概念であるのに対して、「人間の安全保障」は、主権を超えるような強制措置に訴えるのではなく、むしろ個々の人間の「状況が悪化する危険性(downside risks)」に対して、国家と国際社会の予防能力を強化することに焦点をあてることが必要であるとの考えが反映された結果であると言えるでしょう。

人間の安全保障の課題と今後

  脅威が一国内で対処しきれない現代において、国境に対する外敵からの脅威を取り除くことを目的とした従来の国家の安全保障に対して、「人間の安全保障」は、個々の人間に焦点を当て、それぞれに独特の脅威や恐怖を削減し自由と可能性を拡大していく視点を切り開いた点で重要な意味を持つものと思われます。政策的概念としてではなく、「人間の安全保障」をどのように実践するかが問題となる実践的目標であるとして、「人間の安全保障」を実現する一つの手段としてたとえば平和構築を捉える考え方もあります。[5]国連PKOが活動する地域では、様々な要因により人々の生活や生命が脅威や恐怖に曝されています。紛争等により崩壊した国家が、平和構築から開発へと異なる段階を経て安定した国家の再建を目指すことができるよう、「人間の安全保障」の視点から、人々の不安定な状態を削減し、脅威や恐怖を克服する能力を強化していくための土壌を整備し、法秩序を回復してゆくための支援をしていくことが、現在の国連PKOに求められていると言えるでしょう。

[1]国連開発計画. 人間開発報告書1994(日本語版).国際協力出版会, 1994.

[2]人間の安全保障委員会. 安全保障の今日的課題―人間の安全保障委員会報告書. 朝日新聞社, 2003.

[3]なお、日本政府は、人間の安全保障委員会の立上げに先立ち、1999年、国連に、人間の安全保障基金を設立し、2011年9月までに累計約413億円を拠出し、人間の安全保障の理念の実現に向けた支援を行っている。(外務省国際協力局地球規模課題総括課. 人間の安全保障―人々の豊かな可能性を実現するために. 外務省, 2011.)

[4]国連首脳会合成果文書(2005World Summit Outcome)(A/RES/60/1(PDF形式:185KB)別ウインドウで開きます(2005年9月16日)).

[5]「人間の安全保障」を実践的目標として捉える考え方は、例えば日本では、福島安紀子. 人間の安全保障―グローバル化する多様な脅威と政策フレームワーク. 千倉書房, 2010などがある。

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