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国際平和協力本部事務局(PKO)
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第11回 国連PKOと国際選挙支援@PKOなう!

2012年6月15日
国際平和協力研究員
とちばやし のりまさ
栃林 昇昌

国際選挙支援とその目的

 自由で公正、かつ透明性が確保された選挙および住民投票は、民主政府の樹立や住民の帰属を決めるために必要な手続きです。投票による個人の意思表示は、基本的人権として国際的にも認知されています[1]
 国際選挙支援は、紛争を経験した国・地域や最貧国が国際基準に沿った選挙を実施できるよう、国際社会が必要な支援を行うものです[2]。国際選挙支援により、その結果成立した政府の正統性を国際社会にアピールしやすくなるというメリットが考えられています[3]

国際選挙支援の妥当性と主要アクター

 主権国家の国内管轄事項である選挙を国際社会が支援することが内政干渉と受け取られることを懸念し、冷戦期には選挙支援はほとんど行われませんでした。しかし1988年以降、国連決議等[4]で国家主権を尊重しつつ選挙を支援することの重要性が確認されると、国際選挙支援が肯定的に受け止められるようになり[5]、冷戦の終結と相まって活発に行われるようになりました。
 国連主体の選挙支援では、国連事務局の政治局選挙支援部 (EAD)[6]と、国連開発計画 (UNDP)[7]が中心的な役割を担います。また、国連以外にEUなどの地域機構、国際NGOも選挙支援を行うほか、二国間支援の一環として選挙を支援することもあります。例えば、日本は今年行われている東ティモールの選挙を支援するため、平成23年度に1億3500万円相当の資機材等を供与しています[8]

「選挙サイクルアプローチ」

 国際選挙支援は、選挙期間を対象とした支援(event-based support)から、選挙期間の前後のプロセスも対象とした支援(process support)へと変化しました。これを、「選挙サイクルアプローチ」(Electoral Cycle Approach) と呼びます[9]。選挙サイクルアプローチは、現在の国際選挙支援の主流となっています。
 選挙サイクルアプローチでは、選挙支援を大きく「選挙前期間」(pre-election period)、「選挙期間」(election period)、「選挙後期間」(post-election period)の三つの期間に分けて行います。このうち、重点が置かれるのが選挙前期間です。選挙前期間には、選挙に直接関係のある市民教育や選挙人登録の他、法制度の整備、政党の支援まで、多岐にわたる活動を行うのが特徴です。

PKOマンデートに加わった選挙支援

 1980年代後半、冷戦構造が終結に向けて大きく動く中、国連PKOに変化が表れました[10]。同じ時期、国際選挙支援が活発化したのは前述のとおりです。国連PKOと国際選挙支援、それぞれの環境が変化した結果、国連PKOのマンデートに選挙支援活動が加わるようになりました。
 端緒となったのは、1989年に設立されたPKOミッション「国連ナミビア独立支援グループ」(UNTAG) でした。同ミッションの設立を確認した[11]安保理決議632(1989)には、「国連の指揮および管理の下、ナミビア国民が自由かつ強要されない選挙に参加するための条件を保証する」[12]という文言があります。
 以降、国連PKOのマンデートには、必要に応じて選挙支援が盛り込まれるようになりました。特にPKOミッションが設置されるような国・地域は、紛争終結後やいわゆる「脆弱国家」である場合が多く、PKOによる選挙支援の意義や重要性が高まっています[13]
 最近の「統合型」PKOミッションでは、選挙支援もPKOと国連機関が一体的に実施し、効果や効率性を高める施策がとられています。東ティモールでは、国連東ティモール統合ミッション (UNMIT)UNDPの各選挙支援担当部署が統合され、「国連東ティモール選挙支援チーム (UNEST)」として活動しています。
 このように、国際選挙支援は国連PKOの重要なマンデートとなっているほか、ミッションパートナーとの連携は、国連PKOによる選挙支援において今後ますます高まることでしょう。

[1]「世界人権宣言」第21条3項に、「人民の意思は、統治の権力の基礎とならなければならない。この意思は、定期的かつ公正な選挙によって表明されなければならない。この選挙は、平等な普通選挙によるものでなければならず、また、秘密投票又はこれと同等の自由が保障される投票手続によって行われなければならない。」と定義されています。この条文は、国際選挙支援の法的根拠の一つとして認知されています。

[2]日本がPKO外務省設置法別ウインドウで開きますにより海外で行う国際的な選挙監視活動は、国際選挙支援の一部に含まれます。

[3]篠田英朗. ポスト冷戦時代における国際社会の国内選挙支援-民主主義の機能そして平和・人権. 広島平和科学. 1999-2000, 22,p. 20.

[4]国連総会決議43/157および国連人権委員会決議1989/51参照.

[5]橋本敬市. 国際社会による民主化支援の質的変換-選挙支援の位置づけに関する考察. 国際協力研究. 2006,vol. 22,no. 1,p. 34.

[6]United Nations. "Department of Political Affairs:Electoral Assistance."United Nations official web site(accessed2012年5月21日).

[7]United Nations Development Programme. "Electoral Systems and Processes."UNDPofficial web site(accessed2012年5月21日).

[8]外務省."民主的な国政選挙による平和構築計画 (UNDP連携)"別ウインドウで開きます国際協力-政府開発援助ODAホームページ. (参照 2012年5月21日).

[9]選挙サイクルアプローチの原型は、2004年に形作られたと言われています。

[10]栃林昇昌."拡大する国連平和維持活動"PKOなう! 2012年4月20日 (第4回). (参照 2012年5月21日).

[11]UNTAGは、厳密には安保理決議435(1979)で設立することが決定されたものの即時実行には移されず、同決議632(1989)で改めて設立を確認された後、実際に設立されました。

[12]国連安保理決議S/RES/632 (1989).

[13]栃林昇昌. "国際選挙支援による平和の定着-暴力から投票へ 市民・有権者教育による平和的紛争解決促進" 第3回国際平和協力シンポジウム. 2012年1月19日.http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/pdf/sympo-3-5-1.pdfPDF形式: 558KB)別ウインドウで開きます.

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