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国際平和協力本部事務局(PKO)
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第19回 国連PKOの人権分野の任務の発展(前編)@PKOなう!

2012年8月10日
国際平和協力研究員
まつざわ ともこ
松沢 朝子

国連平和維持活動(以下国連PKO)の任務が冷戦後に多様化し、平和構築も重要視されるようになったことから、今日の国連PKOの多面的平和維持活動の多くに人権分野の任務が付与されるようになりました。[1]今回から2回にわたり、国連PKOに与えられた人権分野の任務の発展について考察します。

国連人権高等弁務官事務所の存在と役割

 国連の枠組みの中で人権の保護促進を担当しているのは、1993年に設立された国連人権高等弁務官事務所(以下OHCHR)です。[2]同機関は、専門家委員会で国際人権諸条約の履行状況をモニターし、国連人権理事会[3]を事務局としてサポートする等、主に通常の状態(武力紛争のない平時の状態)の人権の保護促進においてその任務を果たしており、[4]同機関の設立やその任務を決定した国連総会決議[5]には、平和維持や人権の現場での活動(フィールドオペレーション)について明確な言及はなされていません。[6]とはいえ、人権は平時のみならず、戦時においても存在しており、紛争中や紛争後の人権の保護促進においても、OHCHRはその任務を有し続けると言えます。
 他方、国連PKOの人権分野の任務は、主に紛争中や紛争後の人権の保護に重点を置いています。それでは国連PKOの最初の人権分野の任務は、いつ、どこで、発生したのでしょうか。

国連PKOの人権分野の任務の発展

 国連PKOに初めて人権分野の任務が付与されたのは、1991年の国連エルサルバドル監視団(ONUSAL)でした。[7]ONUSALには、エルサルバドルの人権状況を検証する任務が付与され、同監視団内に設置された人権部門には約30名の人権監視員や法律顧問が任命されました。[8]ONUSALは、エルサルバドルの人権状況のモニタリング、人権侵害の調査、及び人権侵害撲滅のための勧告作成等により、同国の人権状況の改善に貢献し、紛争当事者間の合意形成への環境設定に寄与した成功例であると評価されており、[9]同監視団が先駆けとなり、その後1992年の国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC[10]等でも人権分野の任務が与えられるようになりました。
 このように、OHCHRが設立される前から、平和構築と人権の保護促進は既に相互に関連しながら、国連PKOの現場におけるプレゼンスを通じて形になっていたと言えます。[11]

 次回は、OHCHRと密接に連携するようになった現在の国連PKOの人権分野の任務の枠組みや、担当範囲に注目します。

[1]PKOなう!第10回「人権とPKOを参照。

[2]1993年に国連事務局の一部として設立。本部はジュネーブ。詳細は、Office of the High Commissioner for Human Rights. "Who We Are".Office of the High Commissioner for Human Rights.http://www.ohchr.org/Documents/AboutUs/IK_Who_we_are_En.pdf. (参照2012年7月6日).

[3]国連総会決議60/251により2006年に国連総会の下部機関としてジュネーブに設置。詳細は、"人権理事会"別ウインドウで開きます. 外務省.http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken_r/index.html. (参照 2012年7月5日).

[4]国連人権高等弁務官事務所は、(1)条約及び委員会部、(2)特別手続部、(3)調査及び発展の権利部、及び(4)能力構築及びフィールドオペレーション部の4つの部局で構成される。詳細は、富田麻里. "人権保護促進のための国際的取組". 国際人権入門. 横田洋三編. 法律文化社, 2008,p. 17-35.

[5]国連人権高等弁務官事務所設立を決定した国連総会決議(A/RES/48/141)は、1993年12月20日に採択された。

[6]国連人権高等弁務官事務所設立を決定した国連総会決議には、平和維持やフィールドオペレーションについて明確な言及はなされていないが、同事務所に対し、国連システムを通じて人権の保護促進活動を調整し、且つ、効率及び効果の向上を目的として、人権分野における国連機構の合理化、適応、強化、能率化を行う責任を与えている。詳細は、国連総会決議A/RES/48/141第4条 (i)を参照。

[7]ONUSALは、1991年5月20に採択された安保理決議693により設立が決定された。背景についての説明は、"エルサルバドル". 内閣府国際平和協力本部事務局.

[8]ONUSAL設立の経緯や構成(含む人権分野)についての詳細は、United Nations Peacekeeping. "ESTABLISHMENT OFONUSAL".United Nations Peacekeeping.http://www.un.org/en/peacekeeping/missions/past/onusalbackgr2.html#one, (参照2012年7月5日).

[9]東ティモール担当国連事務総長特別代表、ネパール担当国連事務総長特別代表等を歴任し、現在はリビア担当国連事務総長特別代表の責にあるイアン・マーティンは、ONUSALは成功例であり、人権が国連PKOの任務に与えられた先駆けであったと評価している。人権のフィールドオペレーションについての詳細な考察は、Ian Martin, "A New Frontier:The Early Experience and Future of International Human Rights Field Operations".Conference on the Promotion and Protection of Human Rights in Acute Crisis.Mukesh Kapila他編.http://www.essex.ac.uk/rightsinacutecrisis/report/martin.htm(参照2012年6月10日).

[10]UNTAC設立背景についての説明は、"カンボジア"、内閣府国際平和協力本部事務局.http://www.pko.go.jp/PKO_J/result/cambo/cambo02.html, (参照2012年7月6日). 英文による、より詳細な説明は、United Nations Peacekeeping. "UNITED NATIONS TRANSITIONAL AUTHORITY IN CAMBODIA".United Nations Peacekeeping.http://www.un.org/en/peacekeeping/missions/past/untac.htm, (参照2012年7月6日) を参照。

[11]冷戦終結が人権分野にもたらした新たな局面についての考察は、今井直. "人権分野の国連の活動と改革の動き". 21世紀における国連システムの役割と展望. 日本国際連合学会編. 国際書院, 2000,p41-60を参照。

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