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第26回 紛争予防のための教育@PKOなう!

2012年9月28日
国際平和協力研究員
とやま せいこ
外山 聖子

拙稿第20回「紛争期における教育支援」に続き、本稿では紛争前の教育支援である「紛争予防のための教育」について触れたいと思います。

紛争や対立の原因

「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」[1]という一節が、ユネスコ憲章の前文にあります。天災や自然災害など人間の意志に関係なく発生する災害とは違い武力紛争は人災であり、どれだけ大きな武力紛争であっても、その原因の根底は個人の心の中にあり、さらに解決策も個人の心により見いだされるものであるという意味です。個人レベルであっても国家レベルであっても、資源の不足、領土・土地問題、不公平、価値・信念の違い、嫉妬、私利、誤解、理不尽な要求、秘密主義など、構造的に同じような原因で、武力紛争や暴力的な対立が起こっているケースも多くみられます。[2]そのために紛争を予防するためには、人々に平和の文化を定着させることが重要となります。[3]

紛争予防・平和維持の手段としての教育

世界人権宣言において、「教育」は人類や各国家の発展だけでなく、人間の全人格的発達及び人権の尊重及び基本的自由を目指し、全ての国家、人種、さらに宗教団体間の理解、受容、友好関係を強化し、さらに国際連合の平和維持のための活動を助長していく役割を担うことを望まれています。[4]また多様な個人、性別、国民、そして文化に存在する価値観を認識し受容し[5]、さらにその多様性のなかで異文化の人々と意思疎通し合い、分かち合い、さらに協力し合うための知識と能力を身に着けることが、教育の重要な目的の一つでもあります。[6]世界には多様な国民や個人が存在し、それだけ問題の解決方法も多種多様なものがあります。グローバル化が進む現代において他の国の人々と共生していくためには、人々はお互いに理解尊重し合い、平等な立場で合意できる解決策を模索することは、非常に意義のあることと、なります。[7]そのためにも教育によって、お互いの個人の独自性を助長し、平和や友好そして連帯を助長する考えや解決策のために人々が意見を合致させ、さらに暴力や武力を使わずに紛争を解決する知識と能力を身に着けて実践することが、平和維持さらに紛争予防に繋がるのです。[8]

紛争予防のための教育

武力紛争は一旦起こってしまうと、解決するまでにとてつもない資源、労力、資金及び時間を要します。さらに紛争や対立は長期化すればするほど解決が難しくなるため、紛争を未然に予防すること、また起こってしまった場合は速やかに合意した解決策を見出し実践することが、平和維持の最良の策となります。紛争を予防するための教育には、国際理解教育、平和教育、異文化理解教育、人権についての教育、持続可能な開発のための教育、軍縮教育、非武装化教育、紛争解決教育、ジェンダー教育[9]、交渉・調停トレーニングなど[10][11][12]、様々なものがあります。国家の安全保障よりも人間の安全保障[13][14]を重視し、世界の平和を目指して包括的なアプローチを意識した教育を目指し実践し続けていくことが、世界の紛争予防及び平和維持、さらに世界の人々の生活の質の向上にも繋がるのです。[15]

[1]The Constitution ofUNESCO(1946). (http://portal.unesco.org/en/ev.php-URL_ID=15244&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html)

[2]Morton Deutsch. (1973).The Resolution of Conflict:Constructive and Destructive Process,Yale University Press. 【訳書】モートン=ドイチ著 杉田千鶴子訳(1995年)「紛争解決の心理学」ミネルヴァ書房

[3]Eva Nordland&Betty Reardon. (1994).Learning Peace:The Promise of Ecological and Cooperation Education,State University of New York Press,Albany.

[4]The United Nation. (1948).The Universal Declaration of Human Rights,Article26. (http://www.un.org/en/documents/udhr/)

[5]Reardon,A.Betty. &Cabezudo,Alicia. (2001).Learning to Abolish War:Teaching Toward a Culture of Peace.Hague Appeal for Peace. (http://www.peace-ed-campaign.org/resources/LTAW-ENG-1.pdf) 【訳書】藤田秀雄・淺川和也監修(2005年)「戦争をなくすための教育」明石書店

[6]UNESCO,Section for the Promotion of Rights and Values in Education Division for the Promotion of Basic Education. (2008).UNESCO's Work on Education for Peace and Non-Violence:Building Peace Through Education,Paris.

[7]Johan Galtung. (1996).Peace by Peaceful Means:Peace and Conflict,Development,and Civilization,International Peace Research Institute,Oslo.

[8]Declaration of the44th session of the International Conference on Education,Geneva,October1994.Endorsed by the General Conference ofUNESCOat its twenty-eight session Paris,November1995. (http://www.unesco.org/education/nfsunesco/pdf/REV_74_E.PDF)

[9]Reardon,A.Betty. (2001).Education for a culture of peace in a gender perspective.UNESCOPublishing.

[10]UNESCO. (2002).UNESCO-Mainstreaming The Culture of Peace:the Culture of Peace,Co-ordination of the Bureau of Strategic Planning United Nations Educational,Scientific and Cultural Organization.

[11]Birgit Brock-Utne. (1989).Feminist Perspectives on Peace and Peace Education,The Athene Series,Teachers College Press.

[12]UNICEF(2012).TeachUNICEF,United States Fund forUNICEF,New York. (http://teachunicef.org/explore/topic)

[13]人間の安全保障に関する決議別ウインドウで開きます(A/RES/66/290) (外務省のホームページへ)

[14]人間の安全保障の詳細につきましては、第2回 「人間の安全保障」をあわせてご参照ください。

[15]Reardon,A Betty. (1988).Comprehensive Peace Education:Education for Global Responsibility,Teachers College Press.

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