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第31回 紛争分析、紛争決着、紛争解決@PKOなう!

2012年11月2日
国際平和協力研究員
とちばやし のりまさ
栃林 昇昌

「紛争分析」~なぜ紛争は止められないか~

 紛争とは、二者以上の関係者が、それらの利害や価値を最大化しようとするために生じる争いです。社会生活における世界共通の事象で、国家間、国内、社会、個人など、あらゆる段階において発生します[1]。多くの場合、紛争の根底には経済格差、社会変動、文化の形成、心理的啓発、政治体制などがあります[2]。最悪の場合、関係者は最終的に暴力以外の選択肢を失い、武力紛争へと発展します。
 なぜ、人々は社会のルールや規範に従わないのでしょうか?なぜ、政府や法と秩序は紛争を止められないのでしょうか?このような疑問を背景に、紛争問題を解決するために発展したのが「紛争分析」 (conflict analysis) という分野です[3]。紛争分析には、「紛争決着」と「紛争解決」という二つのアプローチがあります。

「紛争決着」~妥協と利益配分による決着~

 紛争分析のアプローチの一つとして、主にリアリズムの立場をとる研究者が採用しているのが「紛争決着」 (conflict settlement) です。紛争決着では、紛争を客観的な視点から理解し、利害や価値は取引可能であるという考えに基づき、紛争自体を「ゼロサムゲーム」であると捉えます[4]。紛争において、全ての関係者はまず相手を打ち負かし、争いに勝つことを目標にします。関係者の利害や価値は単純に、妥協しなければ最大化されると考えられます。このような条件下で第三者に求められるのが、仲裁者 (mediator) としての役割です。仲裁者には、合理的な妥協点を提案し利益を配分することが期待されます[5]
 しかし、言うまでもなく、そこには敗者も生まれます。この点に関してバートン (Burton) は、包括的、長期的に考えると、勝つことが実際には重大な結果を招くと指摘しています[6]。また、決着をつけても問題の根本的な原因は解決されていないため、紛争が再発するとも言われています。例えば、紛争決着の結果妥協を強いられた「敗者」には、不満と絶望が残されることになるからです[7]

「紛争解決」~問題の根本的解決~

 紛争決着と対照的なのが、「紛争解決」 (conflict resolution) というアプローチです。このアプローチでは、客観的な関係者の利害や価値よりも、むしろ互いの主観的な要求を考慮に入れて紛争に対応します。したがって、紛争解決では、客観的な視点で捉えられる個人、集団、文化に密着した利害や価値よりも、関係者が実際に何を欲しているのか、という点に着目して解決策を模索する努力が図られます。[8]
 紛争解決が第三者に期待するのは、調整者 (facilitator) としての役割です。すなわち、紛争解決における第三者の役割は、仲裁プロセスを進めることではなく、紛争内部に横たわる問題を明らかにし、解決策を見出すことになります。この点から、紛争解決は”問題解決”アプローチであると言えるでしょう[9]
 長期的な平和という点から考えると、紛争解決の方がより実効性があるように見えます。しかし、紛争決着よりも優れているというのは短絡的すぎます。実際に、紛争解決は"理想主義的"、"非現実的"という批判もあります[10]。上杉[11]が指摘するように、国連PKOは紛争決着[12]、紛争解決双方を包含する傘として機能してきました。紛争への対応で最も重要なポイントは、紛争決着と紛争解決それぞれの特性を現実と照らし合わせながら、実際には紛争決着から紛争解決へと形を変えながら解決策を見出すことによって紛争への対応が実を結ぶ、ということです[13]

[1]Burton,J.W.Conflict Resolution:Its Language and Processes.Scarecrow Press, 1996,p. 8-9.

[2]Ramsbotham,O.;Woodhouse,T.;Miall,H. "Introduction to Conflict Resolution:Concepts and Definitions"in Contemporary Conflict Resolution:The prevention,management and transformation of deadly conflicts. 3rd ed.,Polity Press, 2011,p. 7.

[3]前掲[1],p. 4.

[4]上杉勇司. 変わりゆく国連PKOと紛争解決:平和創造と平和構築をつなぐ. 明石書店, 2004,p. 93.

[5]Burton,J.W. "The Procedures of Conflict Resolution"in International Conflict Resolution:Theory and Practice.ed.Azar,E.E.;Burton,J.W.,Wheatsheaf Books, 1986,p. 95.

[6]前掲[5],p. 92-93.

[7]前掲[1],p. 8.

[8]前掲[5],p. 96.

[9]前掲[8].

[10]前掲[2],p. 399.

[11]前掲[4],p. 284.

[12]上杉 (前掲[4]) はconflict settlementの訳語として「紛争処理」を用いていますが、conflict settlementが勝ち負けを意識している点に注目し、筆者は「紛争決着」を訳語として用いました.

[13]本稿では、紛争分析、紛争決着、紛争解決の理論的整理を行いました。具体的な実践については、紛争解決のプロセスや事例を紹介している@PKOなう!湧川記事 (第15回第22回第28回) をご参照ください.

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