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国際平和協力本部事務局(PKO)
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第40回 国連PKOミッション遂行のための戦略@PKOなう!

2013年2月1日
国際平和協力研究員
たなか きわこ
田中 極子

これまで、国連PKOの活動について「人間の安全保障(第2回)」「保護する責任(第5回)」「文民の保護(第14回)及び(第30回)」という視点から見てきました。国連PKOはこのような視点に基づくために、さまざまな活動が含まれる多機能型になっており、また、その任務を遂行するために統合ミッションという形態をとることが多くなっています(参考:第4回「拡大する国連平和維持活動」)。それでは、多機能型の統合ミッションにおいて、ミッションを遂行するための目標は何であり、何を基準としてその目標が達成されたと判断するのでしょうか。ミッション遂行の成果を判断して、どの時点で任務を完了するのかを決定するための戦略がとても重要です。

今回は、国連PKOにおけるミッション遂行のための戦略について、2001年に国連事務総長が国連安全保障理事会に対して提出した報告書「戦略のない撤収はない(No exit without strategy)」(S/2001/394)[1]に基づいて紹介します。

平和構築へ向けた活動とは

国連による平和活動の最終的な目標は、持続する平和を達成することです。それは、その地域から紛争をなくすだけではなく、紛争が再発した場合にも、国家主権の行使を通して平和的に解決する仕組みを作ることです。そのために、多機能型の国連PKOの任務には、正統性のある制度構築や、統治や法の支配の促進を支援することが含まれます。このような支援を通して、どこの社会にも発生しうる対立が武力紛争へと発展することを防ぐための社会的、経済的、また政治的制度を構築することが平和構築の目的であると言えます。これは、その土地に住む人々によってのみ達成できるのであり、国連は永続する平和と持続する発展のプロセスを支援するにすぎません。

こうした平和構築の概念を明確に認識したうえで、国連は平和構築へと導くための中核となる3つの目標を掲げています。[2]
(1)国内外の治安の強化:平和維持要員や軍事監査要員の派遣を伴い、治安維持改革(警察改革、武装解除・動員解除・社会統合(DDR)、法整備、地雷対策など)を促進するための安全を確保すること
(2)政治制度及び良い統治の強化:民主主義制度を強化すること(政府や市民社会の能力向上、人権のための技術的支援、選挙支援など)
(3)経済的・社会的復興:避難民や難民の帰還や社会統合、和解のための信頼醸成措置、市民社会(女性やNGO)の積極的参加、保健・水・衛生等の社会サービスの提供、雇用創出、インフラ整備などを通した経済・社会発展のための条件を育成すること

このように、平和構築へと結びつける活動は非常に広範です。この中で、特に国連PKOが担う役割には、(1)の国内外における治安の強化の部分です[3]

ミッション遂行の鍵と課題

国連PKOが、平和構築に向けた支援の一端を担い、その役割を終えて撤収するためには、上記(1)の活動が、(2)や(3)の活動と統合(または調和[4])することが求められます。そのためには、国連システムが全体として協力的であるか否か、また、PKOの一部ではなくとも、国際的金融機関や国際NGO、そしてドナーを含む他の主体による活動がどの程度効果的かという点が、PKOミッションの成功のための一つの基準となります。

国連PKOミッションが展開される国では、多くの場合国連諸機関が連携するための国連カントリーチームを形成しています(参考:第17回「国連PKOと国連カントリーチーム」)。そこで、軍事部門を伴い比較的大規模且つ短期間で活動をする国連PKOと国連カントリーチームが良好な関係を築くことにより、国連PKOからカントリーチームへの活動の引き継ぎが円滑にはこび、国連PKOが撤収したのちにも平和構築のプロセスが継続されることになります。

しかし、残念ながら、国連PKOとカントリーチームが良好な関係を築いていても、国連PKOの任務が確実に達成されるわけではありません。紛争当事者が協力を拒んだり、様々な理由により和平合意が遵守されないなどして、紛争後の平和構築への移行が実現しない場合もあります。国連PKOではない手段による対応の方が好ましい場合もあり、国連PKOは撤収を余儀なくされることもあります。ただし、このように撤収した場合にも、国連システムや国連安全保障理事会の責任が終わったことを意味するのではなく、継続して関心を示し、代替案を模索し続けることが求められます。

国連PKOの目的が平和構築への移行支援であるという明確なビジョンのもとに、国連システム全体としての戦略に基づき国連PKOの活動を決定することが、ミッションを遂行する重要な鍵となります。

[1]Security Council,Report of the Secretary-General, "No exit without strategy:Security Council decision-making and the closure or transition of United Nations peacekeeping operations" (S/2001/394, 20April2001)。なお、日本においても、たとえば篠田英明『平和構築と法の支配―国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社,2011年)では、「法の支配」という視点から平和構築活動の戦略論が議論されています。

[2]同上報告書パラグラフ20

[3]本文でも下述しているとおり、多機能型国連PKOの場合、国連カントリーチームと連携して、(2)や(3)につなげていくことが求められます。

[4]第4回国際平和協力シンポジウムにおける星野俊也氏による基調講演より。

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