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第41回 DDR(2):動員解除@PKOなう!

2013年2月15日
国際平和協力研究員
わくがわ いづみ
湧川 いづみ

動員解除の目的

 「DDR(1): 武装解除(第35回)」では、DDRの最初の活動である武装解除(disarmament)について述べましたが、本稿では、DDRの二番目の活動である動員解除(demobilization)について、国連の枠組みでの取り組みを見てみましょう。 事務総長のノート (A/C.5/59/31)[1]による動員解除の定義は、「現役の戦闘員[2]を正規の軍隊やその他の武装勢力から正式かつ統制的に除隊することである」となっています。その目的は、元戦闘員を以前所属していた部隊や部隊長の指揮下から隔離し、これまでの関係を断ち切ることによって社会復帰を促進するということです。そのため、動員解除は外面的だけでなく、内面的(精神的)にも元戦闘員から市民に戻るために大変重要なプロセスです。 武装解除は主に国連軍事要員によって実施されますが、動員解除は文民要員が中心的役割を担い、軍事要員が補助的な役割をします。その理由は、文民要員との接点を多く持つことによって、これから市民として生きていく元戦闘員の社会復帰(rehabilitation)を促進する目的があるからです。

動員解除の方法

 動員解除の方法として一般的なのが、カントンメントと呼ばれる仮設宿営地に元戦闘員を一時的に収容する方法です。その収容期間中に市民に戻るための準備が行われます。[3]動員解除は、元戦闘員を非武装化し、一市民として社会復帰するまでの移行期という位置づけでもあります。必要があれば、動員解除から社会復帰までの間に「再挿入(reinsertion)」という支援が行われる場合もあります。再挿入支援は、元戦闘員やその家族の基本的ニーズを短期間補うことを目的に行われる支援です。支援例として生活費や仕事の紹介、また衣食住の提供などが行われます。 動員解除の期間が短く済み、元戦闘員が早く社会復帰するのが理想的ですが、対象となっている武装勢力の構造が軍隊の構造により近い場合や、指揮系統がしっかりと確立しており仲間意識が強い場合などには、長引くことが多々あります。長期間戦闘員として戦っていた者が、市民となり復興期における自国の経済活動に参加していくには、精神的な変化(transformation)が必要であり、それは長いプロセスであるのも事実です。 次に、ネパールの事例から動員解除が実際にどのようなプロセスだったのかを見てみましょう。

ネパール・マオイスト兵の動員解除

 武装解除の際にマオイスト兵として認証された1万9千人の元戦闘員は、ネパール包括的和平合意書に基づき、国内7か所の主カントンメント及びその周辺に点在する小さなキャンプの合計28か所に2008年初頭から収容されました。[4]カントンメント内での生活は、元マオイスト兵の社会復帰を促進するように、ドナーの支援を受け充実したものでした。元兵士対象に人権や国際法の講義が行われたり、コンピューターの使い方講習や英語の授業が行われたりしました。 しかし、マオイスト党指導者の思惑により、軍としての性質を断ち切ることはされませんでした。そのためカントンメント内でも引き続き軍事訓練や演習が行われ、兵員はマオイスト軍の指揮命令に従わなければなりませんでした。その理由は、和平プロセスの行方が不透明であり、マオイスト党指導者は万が一紛争が再発した場合のことを考え、軍の動員解除に大変慎重だったからです。 軍隊としての繋がりが強く指揮系統が強かったマオイスト軍の動員解除は、結局2012年3・4月にカントンメントの閉鎖が始まるまで続き、元兵士は4年以上も収容されることになってしまいました。ネパールの動員解除の事例はまさしく軍隊としての組織の強さや、プロセスの複雑さ、また政治的思惑が複雑に絡み合った結果、大変長期化してしまった例でした。 カントンメントを出たマオイスト兵が、その後どのような道を歩き始めたのかは次の@PKOなう!(第45回予定)で見ていきたいと思います。

[1] 第59回国連総会事務総長の告示(UNGeneral Assembly Secretary General's NoteA/C.5/59/31、2005年5月発出。

[2] 事務総長のノートでは、「combatant」という用語が使われていますが、本稿では「戦闘員」と訳します。ここでいう戦闘員とは前線で戦っている要員だけではなく、軍隊および武装集団の構成員を含みます。更に、文民(civilian)と軍隊の構成員・群民兵の概念の違いは、赤十字国際委員会(ICRC)出版「国際人道法上の敵対行為への直接参加の概念に関する解釈指針」および第30回PKOなう!「文民の保護における文民と附随する問題」(田中研究員著)をご参照ください。

[3] 収容所での活動内容などは、収容期間の長さによって変わってきます。収容期間が短い方が理想的ですが、もし期間が長くなりそうであれば、収容期間中に社会復帰支援(reintegration)へ繋がるような活動が行われます。例えば、カントンメント内でコンピューターの使い方を教授するなど、就職へつながるような活動が行われます。

[4] ネパール包括的和平合意書(2006年11月21日署名)、第4章「Management of Army and Arms」第4条(4.1~4.5項)「Relating to the Maoist Army」を参照のこと。更にネパール包括的和平合意書について知りたい場合は、「和平プロセス(3):和平合意書~ネパールのケース(第28回)」を御一読ください。

【参考資料】
1) ニルス・メルツァー著、黒崎将広訳.国際人道法上の敵対行為への直接参加の概念に関する解釈指針.ICRC出版.2012.68p.ISBN: 978-2-940396-19-1
2)Operational Guide to the Integrated Disarmament,Demobilisation and Reintegration Standards(IDDRS),United Nations Inter-agency Working Group onDDR,UN2006
3)Second Generation Disarmament,Demobilisation and Reintegration(DDR)Practices in Peace Operations,UNDPKO,January2010
4)DDRin peace operations?a retrospective,UNDPKO,September2010
5)Disarmament,Demobilisation and Reintegration of ex-combatants in a peacekeeping environment?Principles and Guidelines,UNDPKO,December1999

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