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国際平和協力本部事務局(PKO)
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第53回 PKOの運用に関する国連の意思決定機関(1):安全保障理事会(後編)@PKOなう!

2013年7月9日
国際平和協力研究員
つづき まさやす
都築 正泰

はじめに

 前回(第48回)は、国連PKOの運用に関して安全保障理事会(安保理)が中心的な意思決定機関であること、また国連PKOが全加盟国から提供される資源を総動員する活動として近年拡大する中で安保理は意思決定機関ではあるが実施主体ではないという「制約」が増幅していることを述べました。これらの点を踏まえ、本稿では、安保理が実際に国連PKOの運用に関する意思決定をどのように行っているのかについて検討したいと思います。

PKO運用における安保理の裁量

 国連PKOの運用原則として、(1)主要当事者の同意、(2)任務遂行における不偏性、(3)自己防衛・任務防衛以外の武力不行使の3点が一般的に知られています。この3原則は国連事務局が提示したものですが[1]、安保理は近年、事務局が示したこのPKO運用三原則を尊重した上で[2]、国連PKO各ミッションの設立・延長・撤退の決定を個々の事案に応じて行ってきました。周知のとおり、そもそも国連憲章上、PKOについて明文の規定はありません。国際の平和と安全の維持を主要責務[3]とする安保理には、平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為の存在を決定し、平和及び安全を維持・回復するための措置を勧告・決定する[4]「最大限の裁量」が与えられています[5]。この中で安保理はこれまで国連PKOの多角化を図ってきました。

議題リード国

 安保理の意思決定過程では、議題リード国(Lead Country)が重要な役割を果たします。議題リード国とは、安保理で審議中の紛争案件毎に理事国内の意見・利害調整を主導する理事国であり、非公式に理事国内で分担されています。国連PKO運用の文脈でみれば、現行の15ミッション毎に議題リード国が、各ミッションの運用にかかる意思決定文書となる安保理決議案等を起案し、理事国内での文言調整、また必要であれば事務局、安保理外の関係国や国際機関とも調整を行い、最終的な意思決定に導きます[6]

 議題リード国はあくまでも慣習であり公式に確立された制度ではありません。そもそも安保理の作業方法(working methods)について安保理は法的に拘束力の高い文書を採択しておらず[7]、その大半は明文化されていない慣習の集積です[8]PKOの運用に関する安保理の意思決定も非公式な慣習によって行われており、このことにより一定の柔軟性が確保されています。しかし議題リード国の構成[9]をみると、常任理事国(イギリス、フランス、アメリカ、ロシア)に多く、それらの恣意性が働く余地が少なくないことが示唆されます。なお、非常任理事国が議題リード国を務める案件もあり、我が国は過去の安保理任期において、東ティモールやアフガニスタンの議題リード国を務めたことがあります。

要員派遣国との協議・調整

 前回、安保理は国連PKOの運用に関する意思決定機関であっても実施主体ではないという「制約」が増幅していることを述べました。このことは、国連PKO各ミッションの運用にかかる重要事項を決定する安保理が、実際に現地で活動を行う要員派遣国の意向を考慮せずに意思決定を行うことが困難であることを示唆しています。

 安保理では、1994年以降、要員派遣国側からの提案[10]を受け、国連PKOの運用にかかる意思決定を行うに際し、事前に要員派遣国とどのように協議するべきかについて様々な検討・試みが行われてきました[11]。その中で、2001年6月、安保理は決議第1353号を全会一致で採択し、PKOミッションの新設あるいは現行ミッションの任務更新を安保理が検討する前に、要員派遣国と協議するべく公開あるいは非公開の会合(要員派遣国会合)を開催することを決定しました。先述のとおり、安保理の作業方法の大半が明文化されない慣習である中で、このように決議により安保理が作業方法の在り方を規定したのはまれな事例であり、安保理に対する要員派遣国の影響力の高まりが伺えます。

 しかしながら、要員派遣国会合の開催は近年定着していますが、安保理と要員派遣国の間で実質的な議論が十分に行われないまま短時間で終了する場合が多く十分に機能しているとはいえません。要員派遣国との調整はむしろ安保理議題リード国を中心とする非公式な関心国の協議枠組み(「グループ・オブ・フレンズ」(Group of Friends[12]等)で行われているのが実態です。

むすびに

 国連PKOの運用に関する安保理の意思決定には、原則面と作業方法との面で一定の柔軟性が確保されており、その中で安保理議題リード国の調整能力により国連PKOの多角化が図られてきました。同時に、そこには安保理常任理事国を中心に特定の加盟国の恣意性が働く余地が少なからずあることが示唆されます。ここから、現行の安保理常任理事国と同等に国連PKOの運用に関する意思決定を主導する能力、また国連PKOの実施面において貢献の実績がある加盟国が、安保理でより長期に活躍できるようにすることが国連PKOのさらなる発展に不可欠です。そしてここに安保理理事国の拡大の必要性が見出されます。次回は、国連PKOの運用に関する意思決定過程機関としての総会(第5委員会、第4委員会PKO特別委員会(C34))を取り上げます。

[1]United Nations,Department of Peacekeeping Operations/Department of Filed Support,United Nations Peacekeeping Operations Principles and Guidelines, 18January2008 (Capstone Doctrine),Chapter3“The Basic Principles of United Nations Peacekeeping,”pp.31-41.

[2]東京財団・国連研究プロジェクト(プロジェクトリーダー:北岡伸一上席研究員)「国連の刷新と日本の対国連外交の戦略的展開に向けて」(2011年5月)において指摘されたとおり、政策論議の場において「国連」に言及するとき、少なくとも次の2点の区分が必要。第1に、国連加盟国によって安保理や総会等で行われた集団的な意思決定の結果としての政治的意思(「第1の国連」)であり、第2に、加盟国の意思決定を受け、国連事務総長を長とする国連事務局が行動する際の活動指針(「第2の国連」)である。

[3]国連憲章 第24条1項

[4]国連憲章 第39条

[5]Edward Luck,UNSecurity Council:Practice and Promise(2006),p.123.

[6]松浦博司『国連安全保障理事会:その限界と可能性』東信堂、2009年、157-162頁。

[7]1946年6月、安保理は仮手続規則(Provisional Rules of Procedure)を採択(S/96/Rev.7)。その後この仮規則は国連公用語の追加を反映した以外は実質的な改訂はなされていない。

[8]都築正泰「国連安保理による作業方法改善の動向―安保理議長ノート507(S/2006/507)改定を題材に―」、『外務省調査月報』2011/No.4、46-47頁。

[9]議題リード国の構成については、「安保理レポート」(Security Council Report,http://www.securitycouncilreport.org/)が発刊する月例予測(monthly forecast)で確認できる。同レポートでは議題リード国を「起案者」(pen holder)と呼称している。

[10]1994年9月18日付 アルゼンチン・ニュージーランド両国常駐代表発安保理議長宛書簡(S/1994/1063)等。

[11]2001年1月31日、安保理は下部機関としてPKO作業部会を設置(S/PRST/2001/3)、安保理は同作業部会も要員派遣国と協議する場として活用。

[12]United Nations,The Security Council:Working Methods Handbook(2012),p.92.

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