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第62回 2014-2015年 国連安全保障理事会 非常任理事国選挙@PKOなう!

2013年12月6日
国際平和協力研究員
つづき まさやす
都築 正泰

はじめに

 今年10月17日、国連総会において、2014-15年任期の安全保障理事会(安保理)非常任理事国選挙が実施され、その結果、チャド、チリ、リトアニア、ナイジェリア、サウジアラビアの5か国が選出されました。なお国連では、安保理常任5理事国は「Permanent Five(P5)」、非常任理事国は「(総会で)選出された10か国(Elected Ten, E10)」と呼ばれます。E10の任期は2年で、このうち毎年5理事国が改選されます。

 今回の選挙の翌日、サウジアラビアは、安保理が国際の平和と安全の維持のため効果的に機能するよう「改革」されない限り、来年1月からの自国の安保理任期を受諾しないと宣言し[1]、11月12日にはバン・キムン事務総長宛に書簡を送付して来年1月からの安保理任期を拒否することを公式に通告しました[2]。このため、年内にサウジアラビアに代わる安保理理事国がもう1か国選出されることになります。そのため現時点で来年以降の新E5は確定していませんが、本稿では今回の安保理非常任理事国選挙の背景、また今回の選挙の安保理の政治力学への含意等について検討してみたいと思います。

今次安保理非常任選挙の背景

 E10の議席は地域グループ毎に割り振られています[3]。今回当選した5か国については、サウジアラビアはアジア太平洋グループ[4]、チャド及びナイジェリアはアフリカグループ[5]、チリはラテンアメリカ・カリブグループ[6]、そしてリトアニアは東欧グループ[7]からそれぞれ選出されました。その他に西欧その他グループ[8]がありますが、奇数年に実施される安保理非常任理事国選挙では同グループからの改選議席はなしとする慣習となっています。なおサウジアラビアに代わる理事国はアジア太平洋グループに属する加盟国から選出されることになります。

 今回の選挙に際し西欧その他を除く各地域グループ内では、事前に今次当選5か国それぞれに候補を一本化する調整(エンドースメント[9])が行われており、10月17日の投票当日には1回限りの投票で先述の5か国が選出されました。なお、アフリカグループでは当初、ガンビアが西アフリカ枠での立候補を表明していましたが、同枠でナイジェリアも立候補を表明していたことから、ガンビアは最終的に立候補を断念したといわれています[10]

安保理の政治力学への含意

 現時点で、来年1月からチャド、チリ、リトアニア、ナイジェリアの4か国が安保理に加わることが確定していますが、来年以降、安保理理事国内の政治力学はどのようになるのでしょうか。まず明らかなことは、非常任理事国の大半が国連PKO軍事・警察要員の主要派遣国になります。なお今年12月末でパキスタン、モロッコ、トーゴ、グアテマラ、アゼルバイジャンは安保理任期を終了する一方、韓国、ルワンダ、アルゼンチン、オーストラリア、ルクセンブルクの5か国は来年も安保理理事国を務めます。

今年10月末時点の国連事務局作成の統計で[11]要員貢献第1位であるパキスタン(8,262名)が今年12月末で非常任の安保理任期を終えますが、第5位のナイジェリア(4,777名)が来年1月から安保理に加わります。同国は、前回の安保理任期が2010-2011年であり比較的早期の復帰です[12]。またナイジェリアは前回の安保理任期時、安保理の下部機関の一つであるPKO作業部会[13]の議長国を務め、PKOが直面する様々な課題を取り上げ、議論を主導していました。その他、第6位(4,622名)のルワンダ、第25位(1,063名)のチャド、第35位の韓国(616名)、第38位のチリ(496名)がいます。このように来年以降、PKO主要要員派遣国が多く安保理に参加します。

 要員派遣国は一般的に自国が要員を派遣するPKOミッションへの関心が高いため、各ミッションの任務の更新あるいは変更が安保理で検討される際、審議を主導することが多いP5が軽視できないほどの発言力を有します。この観点からミッション単位でみると、ナイジェリアとチャドはMINUSMA(マリ国連PKO)を、チリとアルゼンチンはMINUSTAH(ハイチ国連PKO)をそれぞれ重視しています[14]

サウジアラビアの安保理任期拒否

 サウジアラビアはなぜ今回の安保理理事国選挙で当選したのにもかかわらず来年1月からの安保理任期を拒否することになったのでしょうか。報道では、同国がシリア、エジプト、イスラエル・パレスチナ問題におけるアメリカの外交政策に対する抗議の意味合いがあったと解説されています[15]

 さらに安保理改革の観点からも検討が必要です。サウジアラビアは、本年5月に結成された、安保理の作業方法改善を求める加盟国グループ(ACT)[16]に参加しています。このグループは、2012年5月、コスタリカ、ヨルダン、リヒテンシュタイン、シンガポール、スイスの5か国で構成するスモール・ファイブ(Small Five, S5)が提出し最終的には撤回した安保理作業方法改善のための総会決議案(A/66/L.42/rev. 2)の採択を目指しています。

 このS5決議案の中心的要素は、総会が安保理特にP5 に対し自発的に拒否権行使を制限するよう迫る勧告であり、S5はP5からの激しい反発を受けてこの決議案の投票実施を断念しました[17]。この点から、サウジアラビアが今次選挙後に行った安保理任期の拒否宣言で求めた安保理「改革」とは、P5による自発的な拒否権行使の制限であったと考えられます[18]。なお、サウジアラビアに代わるアジア・グループ枠の新安保理理事国としてヨルダンが立候補に意欲を示しており、12月6日に国連総会で予定される投票で選出される見通しです[19]。なおヨルダンはS5及びACTのメンバー国であり、またチリもACTのメンバー国です。

むすびに

 2013年国連安保理非常任理事国選挙の分析より、安保理内におけるPKO軍事・警察要員派遣国の発言力が強化される傾向、また拒否権行使の在り方をめぐり何らかの形でP5とE10の間の対立が予想されます。

 他方、安保理は他の国連主要機関とは本質的に違う機能を持っている点にも注意が必要です。たとえば総会は国際社会が直面するさまざまな課題について討議する場ですが、安保理は国連全加盟国(193か国)から委任を受け、国際の安全と平和の維持のために有効な措置を迅速に決定する機関です。つまり、各理事国には自国の基本的な立場や見解を踏まえつつも適時合意が構築されるために最大限の柔軟性・創造性が求められます。そのためには2014年からの新E5が安保理の議事手続をできるだけ早期に習得した上でP5に負けない合意形成主導力を発揮することが期待されます。

 

[1]UN Watch, “Full Text: Saudi Statement Rejecting UN Security Council Seat,” October 18, 2003, accessed 3 December 2013, http://blog.unwatch.org/index.php/2013/10/18/full-text-saudi-statement-rejecting-un-security-council-seat/

[2]Rick Gladstone, “Saudi Arabia Officially Rejects U.N. Security Council Seat,” New York Times, November 13, 2013, accessed 3 December 2013, http://www.nytimes.com/2013/11/14/world/saudi-arabia-officially-rejects-security-council-seat.html?_r=0

[3]国連憲章第23条1項「総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的に対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する」。

[4]英語での標記は「Asia-Pacific Group」。所属国数は53か国。配分される安保理議席数は2。毎年選挙時1議席が改選。2011-2012年任期国はパキスタン。

[5]英語での標記は「Africa Group」。所属国数は54か国。配分される安保理議席数は3議席。選挙実施奇数年に2議席、偶数年に1議席が改選。2011-2012年任期国はモロッコ及びトーゴ。

[6]英語での標記は「Latin American and Caribbean States」、略称は「GRULAC」。所属国数は33か国。配分される安保理議席数は2。毎年選挙時1議席が改選。2011-2012年任期国はグアテマラ。

[7]英語での標記は「Eastern Europe States」。所属国数は23か国。配分される安保理議席数は1議席。選挙実施奇数年に1議席が改選。2011-2012年任期国はアゼルバイジャン。

[8]英語での標記は「Western European and Other States」、略称は「WEOG」。所属国数は29か国。配分される安保理議席数は2。選挙実施偶数年に2議席が改選。WEOGには、オーストラリア(現在安保理任期中)、ニュージーランド、イスラエル、トルコが含まれる。

[9]北岡伸一『国連の政治力学:日本はどこにいるのか』中公新書、2007年、97頁。

[10]Security Council Report, “Security Council Elections 2013, What’s in Blue,” 16 October 2013, accessed on 3 December 2013, http://www.whatsinblue.org/2013/10/security-council-elections.php

[11]Department of Peacekeeping Operations, United Nations, “Ranking of Military and Police Contributions to UN Operations,” 31 October 2013, accessed on 3 December 2013, http://www.un.org/en/peacekeeping/contributors/2013/oct13_2.pdf

[12].今次選挙で選出された5か国の安保理任期経験は次のとおり。チャド、サウジアラビア、リトアニアはこれまでに安保理任期経験がない。チリ(1952-53年、1961-62年、1996-97年、2003-04年)及びナイジェリア(1966-67年、1978-1979年、1994-1995年、2010-2011年)は過去4回安保理任期の経験がある。

[13].同作業部会の名称は「The Security Council Working Group on Peacekeeping Operations」は2001年1月31日に設置(S/PRST/2001/3)。その後、2002年1月14日、同作業部会にPKO要員派遣国を招致して協議することを決定(S/2002/56)。我が国は、2005-2006年及び2009-2010年の安保理任期時、同作業部会の議長国を務めた。

[14]Security Council Report, “Security Council Elections 2013, Special Research Report” (24 September 2013), pp.4-5.

[15]前掲3参照。

[16]ACT (Accountability, Coherence and Transparency). Volker Lehmann, “Reforming the Working Methods of the UN Security Council,” August 2013, Friedrich Ebert Stiftung.

[17]都築正泰「S5安保理作業方法改善決議案にみる国連安保理改革の政治力学」、日本国連学会編 『国連研究14 「法の支配」と国際機構-その過去・現在・未来』(2013年7月)171-199頁。

[18]なお今年9月中旬に開会した第68会期国連総会一般討論演説において、フランスのオランド大統領は、大規模な人権侵害が発生した事案に関してP5は拒否権の行使を自発的に制限するべき旨発言。

[19]産経新聞『ヨルダンが国連安保理入りへ、非常任理事国選に出馬表明』2013年11月23日、http://sankei.jp.msn.com/world/news/131123/mds13112310350000-n1.htm

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