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第65回 都市部における難民支援@PKOなう!

2014年2月7日
国際平和協力研究員
ふるもと ひでひこ
古本 秀彦

 難民、そして難民支援という言葉を聞くと、それをテントや仮設家屋が立ち並ぶ「難民キャンプ」のイメージと結びつける方が多いと思います。特定のキャンプ地、居住地があり、そこで支援を受けるという難民像です。しかし、実際には約1050万人と言われる全世界の難民のうち、53%、つまり半数以上は都市部で生活をしています[1]。「難民キャンプ」というイメージで支援を考えると、支援対象者の実に半数以上が視野に入らなくなってしまうと言えるでしょう。今回は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が推進している、「都市部における難民保護と解決策に関する政策」[2]ついて紹介します。

都市部における難民支援の概要

 難民は、多様な事情によりキャンプでの居住ではなく、都市部での居住を選択することがあります[3]。また、多くの国で、難民キャンプ自体、すべての難民を受け入れ可能な規模ではありません[4]。そして、都市部における難民への支援は、一定の地に集まって居住しているキャンプ難民とは異なるアプローチが求められます。今日、都市に住む多くの難民は、女性、子供および高齢者であり、結果として暴力や搾取、住居、公的サービスの受給等、様々なリスクに直面しています。筆者個人の経験としても、都市部においては一家族ずつ居住場所を特定していくことに多大な労力がかかり、また難民が置かれている環境も、一通りの支援がパッケージとなる画一的なキャンプ環境と異なることから、難民の所在の把握、ニーズの把握、そして適切な支援を適切な人に届けることは大きな課題でした。UNHCRは、1997年に都市部に居住する難民に関するポリシーを発行しましたが、2000年代に入り急激に増え続ける都市部で生活する難民数に応じ、2009年、これを改訂する形で「都市部における難民保護と解決策に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のポリシー」を発行しました[5]


都市部における難民保護と解決策に関する政策には、二つの大きな目的があります。第一に、難民の権利は居住場所、都市部にたどり着いた手段、国内法令において有する(または有しない)地位に影響されるものではないという認識のもと、都市部を難民がその権利を享受するに適切な場所とすること。第二に、当局の承認の有無に関わらず、難民の権利が尊重されニーズが満たされるに相応しい環境としての都市部の保護のスペース[6]を維持、拡大することです[7]。また、これらを達成するために「難民の権利」、「国家の責任」、「パートナーシップ」、「ニーズ評価」、「年齢、ジェンダーおよび多様性」、「公正性」、「コミュニティ志向」、「難民との対話」、「自立」の九9つの原則が定められています[8]。これら九9つの原則は、要約すると都市部において、難民が受入国の責任の下に難民として適切な権利を保ち、UNHCRは都市部特有の地理的、社会的事情に則したニーズの特定と支援の実施を自治体等と協働で進めていくことと言えます。


こうした原則の下、支援は大きく分けて三つのカテゴリーに分けることができます[9]。まず一つ目、「登録・証明書の発行、難民認定」のカテゴリーでは、支援を求める難民、または都市部に住む難民申請者がアクセス可能な接受施設の設置、難民の登録と正確な統計データの収集、身分証明証の発行、難民認定手続きの確実な実施が定められています。登録・証明書、そして難民認定は、難民として居住国で適切に権利を享受するために不可欠です。しかし、都市部では、難民や支援を必要とする人々が散在しており、所在場所や滞在における問題を即座に把握することが出来ません。また、難民自身も、何処に行けば登録できるのかといった情報を入手することが出来ない場合があります。こうしたことから、都市部では例えば、電話ホットラインの設置やウェブサイトを通じた情報発信に力が入れられます[10]


二つ目の「難民コミュニティとの関係」のカテゴリーでは、積極的なコミュニティへの働きかけ、難民との建設的対話関係の育成などがあげられます。多様な地域に散在し、さらに賃貸住居の不安定さもあり、UNHCRが都市部で難民一人一人を常に把握し、適切な支援に結びつけることには限界もあります。このため、特に地元提携団体との連携は非常に重要です[11]


三つ目、「難民の安全かつ持続的な生活」カテゴリーでは、生計手段の確保と自立の促進、公的サービス(教育、保健・医療等)へのアクセス、物質的ニーズの充足、移動の自由、そして恒久的解決策の促進があげられます。都市部では、基本的には全てが賄われるキャンプ・居住地環境と異なり、難民が自立した生活を確立することが大切です。また、各地で難民用に特別なサービス提供所(学校、病院等)を設置することには限界があるため、UNHCRは他国連機関や政府と協力して難民が既存の公的サービスから恩恵を受けられるような方法を確立しなければなりません。さらに、自主帰還、現地統合、第三国定住という難民状態の三つの恒久的解決策については、キャンプ・居住地在住の難民と同じように解決策が受けられるような配慮が必要になります[12]

都市部における難民支援とその課題

 先に触れたように、都市部に居住する難民は、世界全体の難民総数に対する割合として、増加傾向にあります。これは、人として、尊厳のある生活を維持するためには決して否定すべき状況ではありません。また、キャンプ・居住地を設置、運営していくということは、国際社会に対して巨大かつ継続的な財政的負担となります。昨今、シリア難民が流入するヨルダンのザータリ難民キャンプが日本では何度か取り上げられていますが、2013年7月22日のニュース記事によると、同キャンプの一日あたりの運営費は1億円に上るとのことです[13]。国際社会、そして難民受け入れ国がその責任を果たす上で、都市部に居住する難民特有の状況に目を向け、多様なアクターと協力の上で難民への支援を検討・推進していくことは、難民の尊厳を守ること、そして持続可能な難民支援を実現していく上で重要な点であるといえます。



[1]UNHCR, “UNHCR Global Trends2012”,p35.http://www.unhcr.org/cgi-bin/texis/vtx/home/opendocPDFViewer.html?docid=51bacb0f9&query=Global%20Trends%202012(2013年12月3日参照)

[2]本稿で言う「都市部における難民」とは、難民として特定の国に避難し、都市に居住する人々を意味し、都市で生活した背景を持つ人々という意味ではありません。

[3]難民が都市部を居住地に選ぶ理由の多様性は国、地域によって異なります。生活、文化、社会的な理由もあれば、迫害に繋がる理由もあり得ます。ヨルダンに逃れたシリア難民の場合には、シャワーやトイレが共同で冷たい水しか出ない(ヨルダンの冬は東京同様の寒さです)、プライバシーを得る、といった理由で都市部での生活を選ぶことがあります。シリア人は、紛争前は非常に進歩的な暮らしをしていました。

[4]たとえば、イランでは84万人の難民のうち、3%しか難民キャンプに居住していません。しかし、3%と言えども、合計2万5千人以上の人々が生活する難民キャンプが各地に存在しています。http://www.unhcr.org/cgi-bin/texis/vtx/page?page=49e486f96&submit=GO(2014年1月6日参照)

[5]UNHCR、「都市部における難民保護と解決策に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のポリシー」、2009年。http://www.unhcr.or.jp/protect/pdf/urbanpolicy.pdf(2013年12月3日参照)

[6]上記「都市部における難民保護と解決策に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のポリシー」においては、保護のスペースは、迫害の有無、移動の自由、生計手段や公的サービスへのアクセス等、幾つかの指標に基づく概念と定められています。p5

[7]同上。p4-5

[8]UNHCR、「都市部における難民保護と解決策に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のポリシー」、2009年。p6-10

[9]三つのカテゴリーは、説明を簡素化するための便宜的なものと言えます。詳細は以下をご参照下さい。UNHCR, “The Implementation of UNHCR’s Policy on Refugee Protection and Solutions in Urban Areas: Global Survey– 2012”,p4-5

[10]UNHCR、「都市部における難民保護と解決策に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のポリシー」、2009年。p10-15、およびUNHCR, “The Implementation of UNHCR’s Policy on Refugee Protection and Solutions in Urban Areas: Global Survey– 2012”,p1

[11]UNHCR、「都市部における難民保護と解決策に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のポリシー」、2009年。p15-20、およびUNHCR, “The Implementation of UNHCR’s Policy on Refugee Protection and Solutions in Urban Areas: Global Survey– 2012”,p2

[12]UNHCR、「都市部における難民保護と解決策に関する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のポリシー」、2009年。P25-30、およびUNHCR, “The Implementation of UNHCR’s Policy on Refugee Protection and Solutions in Urban Areas: Global Survey– 2012”,p2

[13]AFPBBニュース「「都市化」するシリア難民キャンプ、国連への電気代請求は月5000万円」http://www.afpbb.com/articles/-/2956634(2013年12月5日参照)

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