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国際平和協力本部事務局(PKO)
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第67回 憲法と平和構築@PKOなう!

2014年2月21日
国際平和協力研究員
わだ ようこ
和田 洋子

 1990年代の後半から世界の多くの国々で「憲法」が作られました[1]。日本で生まれた私たちにとっては、生まれたときには既に存在し、「あって当たり前」と思えてしまう「憲法」ですが、紛争後の平和構築プロセスにある国においては、「憲法を作ること」自体が重要な役割を果たします。

憲法と平和構築におけるその役割

憲法とは、国家存立の基本になる、一国の最高法規です。政府と国民および関係機関との関係において、権力の範囲を明確にし、かつ限定することによって「法の支配」に基づいた国家の基盤となります[2]。以前、国連の法の支配活動について書いた折に、「法の支配」が、民主主義や平和、安全保障、開発、人権と相互・相関関係にあること、また、それらを包括的に進めていくことが最終的に国連の目指す「国際平和と安全保障の維持」につながることについて言及しました[3]。この法の支配活動において「憲法を作ること」が大きな役割を果たします。それは、憲法の条文内容のみならず、それを作る為のプロセスそのものが、国家体制の民主的移行を実現し、紛争によって損なわれてしまった平和の再構築と安定化に寄与し、かつ新しい国家建設の基盤となる共通の理念の創造につながるからです[4]。多くの紛争の主たる発生原因のひとつに「法の支配の欠如」が認識されていますが[5]、「憲法を作ること」は、法的観点から紛争原因の除去に貢献し、再び紛争状態に陥らないための抑止の役割も果たします[6]。過去の事例を見てみると、さらに、新しい国家の建設、軍隊が権力の座から退いた後、または、独裁者がいなくなった後の民主主義の確立、および国内紛争から平和に向けて、コミュニティーの協力を図るツールとなどしての機能も担っています[7]。 

東西冷戦終結後の世界的な国内紛争の増大と、その紛争終結から平和構築プロセスへ移行する国や政治システムを変更する国の増加に伴い、国際社会は、それらの国々が新しい憲法を作る、もしくは現行憲法を改正するよう助言し、この分野における援助や技術供与を活発に行うようになりました[8]。その結果、世界の多くの国々で、新しい「憲法」が作られてきました[9]

「憲法作り(Constitution Making)」

 「法の支配」分野において、憲法を作っていくことを「憲法作り(constitutional making)」[10]と呼んでいますが、国連によると、それは、ただ単に条文の内容を作成することだけではなく、 新たな憲法の起草や現行憲法の改正に際しての以下の9つの要素も含むとしています[11]。1)憲法作りに関するニーズの査定2)鍵となる当事者との詳細決定のための調整(どのような枠組みでプロセスを進めるのか、誰が起草に関わるのか、人選の仕方、同意の取り付け方、どのように憲法を制定するのか、スケジュールの決定、意見の相違の解決方法など)3)代表組織(憲法委員会など)の設立4)その機関の主要任務遂行をサポートする為の事務局の設立5)憲法作りのプロセスや憲法の役割および意義を伝える啓蒙教育キャンペーンの実施6) 国民からの意見を集め、またそれを草案に盛り込むため、起草担当機関によって行われる国民コンサルテーションの実施7)議論と変更を目的とした代表フォーラム(議会など)への憲法草案の提出8)最終制定手続き9)制定後期における新憲法と施行政策作りに関する教育、などです。

他方、「憲法作り」という用語では、条文の起草と内容、またそれを制定することのみが意図的に強調されてしまう危惧があるとして、あえて、「憲法構築(constitution building)」という言葉を使用し、憲法創出のプロセスをより包括的に考えようとする動きもあります[12]。ここでは、起草、憲法を作るにあたっての折衝及び調整、制定、また制定後のプロセスまでも含み、つまり、新しい憲法の施行の為に必要な政策や機能、そしてその実行までも含んでいます。「憲法構築」のポイントは、a) 新しい構造を作るという考え方だけではなく、現行のものをさらに改良することも含まれるb)長期的に残る価値を政治システムや統治に付加するc)排他的でなく、いろいろな当事者(調整担当、計画担当、起草担当、国民、活動家、専門家、公務員や国際アドバイザーなど)が包摂的に「(憲法)構築」作業に参加・貢献できるようにすることと説明されています[13]

以上、憲法作りについて見てきましたが、本稿の最後に、アルジェリア元外相であり、紛争解決と平和構築の分野で国際的に活躍している、ブラヒミ氏の言葉(2011年)を紹介したいと思います。

数年前まで、国際的な憲法支援は、それがどのように作られるかより、内容そのものについての支援を中心に行われていました。しかし、戦争で影響を受けた国にとって、どのように憲法を作るかが、その国においての政治システムの再建および強化、そして維持可能な平和を可能にするための重要な鍵となります。特に、経済的、政治的、社会的な面で今よりも公平な秩序をもたらすためには、参加型のプロセスを起点として、合意に基づいたロードマップ(今後の道のり)を作っていくことが必要です[14]

 

[1]International IDEA, Constitution Building after Conflict: External Support to a Sovereign Process, 2011, pp.8-9. http://www.constitutionnet.org/files/cb-after-conflict.pdf last visited 15 Jan 2014.  

[2]United Nations Rule of Law, Constitution-making http://www.unrol.org/article.aspx?article_id=31 last visited 15 Jan 2014.

[3]@PKOなう! 49回 「法の支配と国連PKO」 http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article049.html last visited 15 Jan 2014.

[4]UN Guidance Note of the Secretary-General: UN Assistance to Constitution-making Processes, 2009, pp.3. http://www.unrol.org/doc.aspx?n=Guidance_Note_United_Nations_Assistance_to_Constitution-making_Processes_FINAL.pdf last visited 15 Jan 2014.

[5]「法の支配の欠如」は、紛争を引き起こす要因であり、かつ紛争の産物であるともいえます。「法の支配」がきちんと機能していれば、紛争の原因となりうる、汚職、権力の乱用、犯罪行為、人権侵害、不処罰(impunity)が起こっても法の下に平等に裁かれ、紛争に発展するところまでいかないと理解されていますし、紛争によって混乱が起きると、「法の支配」は遵守されなくなるからです。 Carlson, S.N., Legal and Judicial Rule of Law Work in Multi-dimensional Peacekeeping Operations: Lessons-learned Study, 2006を参照のこと。http://www.peacekeepingbestpractices.unlb.org/PBPS/Library/ROL%20Lessons%20Learned%20Report%20%20March%202006%20FINAL.pdf last visited 15 Jan 2014.

[6]UN Doc A/67/290 pp.10.

[7]Brandt, M. et al, Constitution-making and Reform: Options for the Process, Interpeace, 2011, pp.13. http://www.constitutionmakingforpeace.org/sites/default/files/Constitution-Making-Handbook.pdf last visited 15 Jan 2014.

[8]Williams, R.C., Constitutional Assistance and the Rule of Law in Post-conflict Transitions: An Overview of Key Trends and Actors, Folke Bernadotte Academy, 2013, pp.43-57. http://folkebernadotteacademy.se/Documents/Kunskapsomr%C3%A5den/Rule%20of%20Law/FBA_Const_Ass_web.pdf last visited 15 Jan 2014.

[9]1と同。

[10]英語におけるConstitutional-makingの和訳においては、本記事では、「憲法づくり」を使用していますが、その他には、「憲法規範創出機能」などがあります。参照 篠田英朗「平和構築と法の支配-国際平和活動の理論的・機能的分析」、2004、創文社、pp.40.

[11]4と同。pp.5.

[12]1と同。pp.11-12.

[13]1と同。pp.1.

[14]筆者による仮訳。7と同。pp.i.

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