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第72回 「国連平和維持要員の国際デー」にみる主要要員派遣国の変容@PKOなう!

2014年5月16日
国際平和協力研究員
つづき まさやす
都築 正泰

はじめに

 きたる5月29日は「国連平和維持要員の国際デー」です。66年前(1948年)のこの日、国連安全保障理事会(安保理)は安保理決議50を採択し、国連PKO最初のミッションである国連休戦監視機構(UNTSO)の設置を決定しました。国連総会は、2003年2月24日に総会決議57/129を採択し、UNTSOの設置記念日である5月29日を、毎年国連PKO全要員に対し敬意を表し、また国連PKOで殉職した要員を追悼する日とすることを決定しました。

 今年の5月29日には現在11万名を超える国連PKO全要員[1]に対し敬意を表するとともに、国連PKOで殉職した要員3,215名[2]を追悼するべく、ニューヨークの国連本部では様々な行事が予定されています[3]。本稿では、2003年以降「国連平和維持要員の国際デー」が設置されるようになった政治的背景を分析してみたいと思います。

2003年以降の主要要員派遣国の変容

 しばしば国連PKOが1980年代後半の冷戦末期・終焉以降、活発に展開されるようになったことが指摘されています。しかし、軍事・警察要員数及びミッション総予算といった量的規模からみると、国連PKOが持続的に拡大するようになったのは1999年以降のことです[4]

 1999年以降の国連PKOの持続的拡大の背景で、国連加盟国間の政治関係上、重要な変化は、2003年以降、主要要員派遣国が南アジアとアフリカの途上国で占められるようになった点です。2003年以前の国連PKO主要軍事・警察要員派遣国は比較的に西側先進国で占められていました。冷戦期の国連PKOの主要要員派遣国はオーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン等の西側先進諸国が中心でした[5]

 なお冷戦期の国連PKOでは、安保理常任5理事国(Permanent Five, P5)は要員を派遣しないことが原則とされていました。P5の構成は中国、フランス、イギリス、アメリカ、ロシアです。冷戦期に国連PKOが展開された紛争案件ではP5が直接的な紛争当事者であった場合があり、また大国の関与がミッションの中立性を害するとの懸念がありました[6]。しかし冷戦終焉以降、PKOの規模が大幅に拡大する中でP5からも積極的な要員派遣がみられるようになりました[7]

 別表のとおり(PDF形式:78.3KB)別ウインドウで開きます、1992年12月時点での軍事・警察要員派遣国の第1位はフランス(6,502名)であり、第2位はイギリス(3,719名)でした。また1993年12月末時点で第1位の要員派遣国はフランス(6,370名)であり、1995年12月末時点の第1位の要員派遣国はアメリカ(2,851名)でした。しかしP5の中から上位10位の主要要員派遣国の中に入ったのは、2006年にフランスが第10位(1,988名)であった以降はみられず、また西側先進国が上位10位以内に入った事例は基本的に2003年以降あまりみられなくなりました[8]

 2000年8月のブラヒミ報告でも指摘されたように、西側先進国は北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)等の地域機構の枠組みを通じた要員派遣に重点を置くようになりました。またP5の場合、国連PKOに対しては、イギリス軍部隊のシエラレオネ国連ミッション(UNAMSIL)との共同オペレーション、またはフランス軍部隊の国連コートジボワール活動(UNOCI)への支援等、国連の指揮権に入ることなく、国連部隊と並行して展開する自国部隊が国連PKOミッションと協力する形態がみられるようになりました。[9]

 このような中で、2003年以降、南アジア・アフリカ諸国が西側先進国に代わって国連PKO軍事・警察要員派遣国上位10位を占めるようになりました。さらに、軍事・警察要員の総数自体、約10万名規模までに増加する傾向にあり、要員を派遣する加盟国の数も増加し国連193加盟国中100か国以上が要員貢献を行っている状態になっています。また軍事・警察要員の死傷者は2003年以降、100名を超えようになってきました。1999年以降の国連PKOでは「強靭な(Robust)」実力行使(武器使用)権限が付される傾向がありますが、国内紛争への国連PKOの介入について、積極的な先進国(北)と消極的な途上国(南)という従来から指摘されてきた二極対立からは説明できない政治潮流がみられるようになりました。つまり、「強靭な」実力行使権限を持った国連PKOが、それに消極的といわれる途上国が多く派遣する軍事・警察要員によって大規模に展開されるようになったのです。

 

むすびに

 上記の分析を踏まえれば、2003年の「国連平和維持要員の国際デー」の設置は国連PKO主要要員派遣国の変容、具体的には国連加盟国が幅広く要員貢献を行うようになったことが一つの転機となっていることがうかがえます。つまり、「国連平和維持要員の国際デー」は各加盟国にとって、国連PKOに対する自国のオーナーシップと他の加盟国との連帯感を確認する機会として確立・定着してきました。我が国も、国連PKO総予算における第2位の財政貢献国として、また現在展開中の南スーダン国連ミッション(UNMISS)に要員派遣を行いその中で施設部隊の活動を通じて存在感を増している中で、5月29日は国連PKOに対する我が国の主体的貢献、そして他の加盟国との連帯を再確認する良い機会であるといえるでしょう。

 

[1] United Nations, “International Day of United Nations Peacekeepers, 29 May” (http://www.un.org/en/events/peacekeepersday/) accessed on 9 May 2014.

[2]  United Nations, “United Nations Peacekeeping Operations Fact Sheet: 10 April 2014,” (http://www.un.org/en/peacekeeping/documents/bnote314.pdf) accessed on 9 May 2014.

[3] 前掲注1参照。今年の「国連平和維持要員の国際デー」のテーマは「新たな挑戦への適応」(Adopting to new challenges)。また安保理は、1997年7月22日に採択された安保理決議1121により設置した「ハマーショルド・メダル」に続いて、今年5月8日、ヨルダンの主導により、勇敢な国連PKO要員を表彰するべく、1994年のルワンダ虐殺事件の際に殉職した国連ルワンダ支援団(UNAMIR)軍事監視要員でセネガル出身のンパエ大尉(Captain Mbaye Diagne)の名を冠した「ンパエ・メダル」の設置を決定する安保理決議2154を採択した。

[4] United Nations, “Surge in Uniformed UN Peacekeeping Personnel from 1991-Present,” (http://www.un.org/en/peacekeeping/documents/chart.pdf), accessed on 9 May 2014. Global Policy Forum, “Peacekeeping Operations Expenditures: 1947-2005,”accessed 9 May 2014, (http://www.globalpolicy.org/component/content/article/133-tables-and-charts/27448-peacekeeping-operations-expenditures.html).

[5] 田所昌幸・城山英明編『国際機関と日本:活動分析と評価』(2004年、日本経済評論社)、37頁。Trevor Findlay, The Use of Force in UN Peace Operations (2002), p. 23.

[6] UN Document, (A/3943), “Summary Study of the Experience derived from the establishment and operation of the Force: report of the Secretary-General” (9 October 1958) para.16, para.160.

[7] 川端清隆・持田繁『国連PKO新世代:国連安保理からの証言』(1997年)、227-228頁。

[8]  例外として、2006年12月末時点で第8位であったイタリア(2,462名)、2007年12月末時点で第9位であったイタリア(2,431名)、2008年に第10位であったイタリア(2,497名)がある。

[9]  United Nations, "Report of the Panel on United Nations Peace Operations," (A/55/305-S/2000/809), paras.103-104.

 

 

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