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国際平和協力本部事務局(PKO)
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第87回 紛争後の行政制度の構築支援@PKOなう!

2015年6月5日
国際平和協力研究員
さかい ゆういちろう
境 悠一郎

 

国連平和維持活動の最終的な目的の1つは、紛争経験国において平和の定着を図り、平和構築への移行支援を行うことです。しかし実際には、多くの国が紛争のサイクルから抜け出せていないのが現状で、「2000年から2009年の間に起こった紛争の90%は以前内戦を経験した国で起こっている[1]」とも報告されています。国連は人道支援や平和維持の分野ではある程度の成功を収めてきました。その一方で、持続的な平和に不可欠な、現地政府の能力開発の面においては十分な成果は上がっておらず、紛争経験国における紛争再発のリスクを高めることにもなっています。また紛争被害地域自体に危機に対応する能力が備わっていなければ、国際社会の支援も成功が困難となります[2]

このような中で2012年の事務総長報告書では、紛争再発を防止し、より強靭な国づくりを支援する上で、国連の平和構築における主要優先事項は「Inclusivity」(すべての人々が参加できる、すべての人々が恩恵を受ける)と「Institution building」(制度づくり)であるとしています[3]

今回の@PKOなう!では、国連が平和構築支援における優先事項の1つとしている制度づくりの中でも、主要とされている行政制度の構築支援について、その意味と、取り組みを紹介したいと思います。

平和構築への移行における政府の機能回復支援

平和構築への移行支援を目的とする国連PKOにおいても、制度づくり支援は行われており、現地政府の機能回復・拡張支援は国連民政官の役割の1つです。多くの多機能型国連PKOは、政府の機能回復・拡張支援を含めた平和構築支援活動において、触媒的な役割を果たすマンデートを安全保障理事会から与えられています。政府は税収を生み出し、国民に基本的な公共サービスを提供するために、国土において統治能力を発揮できなければなりません。多機能型国連PKOにおける民政官は、国民の政治参加の促進や政府機関の緊急運営支援などを行うことができます。また適切な場合には、小規模なキャパシティ・ビルディングや、憲法または制度の再編など、より大きなプロセスへの支援を含むこともあります[4]

行政制度の構築支援

平和構築への移行と平和の定着には、紛争後のできるだけ早い段階で、国の主要制度の機能を構築・再構築することが不可欠です。国の主要制度とは、政府が復興作業を主導し、国民のニーズに対応する上で不可欠な5つの主要な行政機能のことを言います[5]

(1)政策立案と公共財政管理(特に計画立案、予算策定、支出):戦略を立て、それを達成するための計画を立て、その計画を実施するための資金を調達し使う能力。最も基本的な行政機能であり、政府の基礎となる。この機能は政治的な要素を含み、外部委託は不可能であり、そして機能的な公共財政管理システムを必要とする。

(2)行政の中核におけるリーダーシップ(大統領府や内閣):孤立したり、体制が脆弱な政府内の省庁・部局が多い中、変革を起こし政策の一貫性を確保するのに必要。政府内の意思疎通や市民への情報公開も重要。

(3)公務員管理:主要職員が採用され、給料が定期的に支払われ、指示や手続きが尊重されること。合理的に組織された中央と地方政府レベルの政府機構の確立。紛争後の地域では給料が何か月あるいは何年も支払われず、採用選考基準や組織設計も機能していないことが多い。

(4)地方行政:政府と市民の交流がもっとも行われるレベル。基本的な公共サービスの提供のみならず、土地管理などの重要な行政機能に関しても主要な役割を果たす。

(5)援助協調:紛争経験国では、援助が国家予算の大部分を占めるため、公共財政管理を考える上で必要不可欠。

このような行政制度の構築は、政府が国民への説明責任を果たすことや、国民の政府に対する信頼の醸成、そして政府の国際社会との関係の土台づくりとしても重要です[6]。しかしながら、行政の主要機能の構築支援における現在の国連の取り組みと能力は十分とは言えません[7]

事務総長政策委員会の委託を受けて、2014年、国連の行政に関するワーキング・グループは、紛争後の行政制度支援において2つの優先事項を打ち出しました。

・和平合意の定着

・政府の主要機能の迅速な回復

今後は、この2つの優先事項に基づいて、紛争後の行政制度の構築支援を実施していくことが求められます[8]

和平合意の定着

行政制度を、公共サービスの提供者と捉えるのみならず、和平合意を定着させるための重要なメカニズムとして考えることが重要です。行政の重要な機能として、治安維持や経済機会及び、公共財の分配など、社会における様々な利害の調整の場としての役目を果たすことが挙げられます。和平合意が順守されるためには、すべての人々が和平プロセスの恩恵を受けることが重要であり、社会から取り残されてきた人々や政治的に排除されてきた人々など、すべての人々が公共部門に参加できる体制であるべきです[9]

政府の主要機能回復

行政制度支援は、紛争直後の段階では包括的な改革ではなく、すでに存在する行政の主要機能回復に集中するべきです。大がかりな行政改革は、政治プロセスがある程度安定し、様々な選択肢に関する全国的な議論が可能になってから行われるべきです。また、早期復興支援の現場では、治安部門や人道支援が重点的に実施されがちで、行政制度はあまり注目されないことが多いのですが、長期的な移行支援を待つだけではなく、行政の主要機能に対する迅速な支援も優先的に実施されるべきです[10]

行政の主要機能支援において有効な手段の1つに南南協力があります。南南協力とは、ある分野で開発の進んだ国が、別の途上国の開発を支援する途上国間の協力を言いますが[11]、国連は紛争後の行政制度支援においても南南協力を促進しています。例えば、南スーダンでは、政府の能力開発を目的として、北東アフリカの準地域機構であるIGAD(Intergovernmental Authority on Development:政府間開発機構)加盟国(ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、スーダン、ウガンダ、エリトリアの7か国)から200人程の公務員が出向という形で南スーダン政府の省庁や部局に派遣され、メンターとして指導に当たってきました。公務員を派遣しているそれぞれのIGAD加盟国が給料を払い続けており、南南協力の好例と言えます[12]。また、自国と同じ地域内の政府基準を満たしたいと望むことが、当該国政府が行政改革を実施する上での動機になるので、地域のパートナーシップは重要です[13]。この事例では、2013年12月以降、政府軍と反政府勢力の衝突が発生し緊張が高まる中でも南スーダンに残っているメンターもおり、他の紛争経験国においても有用なモデルとなりうることを示しています[14]

以上、紛争後の平和構築における行政制度の構築支援について検討しました。重要なことは、紛争再発を防止しうる正当性を持った制度づくりには非常に時間がかかるということです。早くても15年から30年はかかるので行政制度改革には長期的な姿勢が肝心です[15]。そして、現地政府のオーナーシップを尊重せずにすすめられた場合や、正当性を欠く政府によってあまりに早急に進められた場合、改革は弊害をもたらしかねません[16]。したがって、まずは既に存在する行政の主要機能回復に着手し、現地政府主導の下、体制を整えるとともに、制度づくり支援に長期的に取り組む覚悟が必要になります。

 

[1] World Bank, World Development Report 2011: Conflict, Security, and Development, (World Bank, 2011), p. 57.

[2] United Nations, Independent report of the Senior Advisory Group, “Civilian capacity in the aftermath of conflict” (A/65/747-S/2011/85, 22 February 2011), p. 5.

[3] Report of the Secretary-General, “Peacebuilding in the aftermath of conflict” (A/67/499-S/2012/746, 8 October 2012), p. 2.

[4] United Nations Department of Peacekeeping Operations and Department of Field Support, United Nations Peacekeeping Operations: Principles and Guidelines (Capstone Doctrine), (United Nations, 2008), pp. 26-27.

[5] Report of the Secretary-General, “Peacebuilding in the aftermath of conflict” (A/67/499-S/2012/746, 8 October 2012), p. 14, UN Working Group on Public Administration, Restore or Reform?: UN Support to Core Government Functions in the aftermath of Conflict, (United Nations, 2014), p. 13.

[6] Report of the Secretary-General, “Peacebuilding in the aftermath of conflict” (A/67/499-S/2012/746, 8 October 2012), pp. 2, 14.

[7] UN Working Group on Public Administration, Restore or Reform?: UN Support to Core Government Functions in the aftermath of Conflict, (United Nations, 2014), p. 37.

[8] Ibid, pp. 30-37.

[9] Ibid, pp. 30-45.

[10] Ibid, pp. 30-37, 46-54.

[11] JICA, 南南協力, available at http://www.jica.go.jp/activities/issues/ssc/ [accessed 20 May 2015].

[12] Report of the Secretary-General, “Civilian capacity in the aftermath of conflict” (A/66/311-S/2011/527, 19 August 2011), p. 11.

[13] UN Working Group on Public Administration, Restore or Reform?: UN Support to Core Government Functions in the aftermath of Conflict, (United Nations, 2014), p. 52.

[14] Report of the Secretary-General, “Peacebuilding in the aftermath of conflict” (A/69/399-S/2014/694, 23 September 2014), p. 11.

[15] World Bank, World Development Report 2011: Conflict, Security, and Development, (World Bank, 2011), p. 10.

[16] Report of the Secretary-General, “Peacebuilding in the aftermath of conflict” (A/67/499-S/2012/746, 8 October 2012), pp. 13.

 

 

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