第108回 紛争後のリベリアにおける国連による警察改革支援

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2020年9月8日
国際平和協力研究員
よしだ ゆうき
吉田 祐樹

 リベリアでは2003年に内戦が終結し、17年経った今日まで紛争は再発しておらず、同国は平和と安定の確立に向けて一歩一歩前進していますが、その復興の一助を担ったのは国連リベリア・ミッション (United Nations Mission in Liberia: UNMIL) でした。UNMILは様々な分野で貢献しましたが、特にリベリア国家警察 (Liberia National Police: LNP) の改革支援においては、抜本的な組織再編や斬新で効果的な取組を通して、警察能力の向上に貢献しました。本稿では、そのUNMILによるLNP改革支援について概説します。

2度の内戦と抑圧的な警察

 第1次内戦の発端は、1989年、後にリベリア大統領となるチャールズ・テイラー率いるリベリア国民愛国戦線 (National Patriotic Front of Liberia: NPFL) が、当時のサミュエル・ドウ政権の打倒を目指し、コートジボワールからリベリアに侵攻したことでした[1]。 約6か月間の戦闘を経てNPFLはリベリア国土の90%の支配に成功するも、その後も武装集団間の衝突は続き、ようやく1996年にナイジェリアの首都アブジャにて和平合意が締結され、第1次内戦は終結しました[2]。 翌1997年、テイラーはリベリア大統領に選出されましたが、同政権も独裁的で腐敗していたことに加え、新たな反政府勢力の台頭もあって1999年に第2次内戦が勃発。約4年間の覇権争いの末、2003年にガーナの首都アクラにて紛争当事者らが包括和平合意に調印し、長期の内戦は終結しました。
 歴史的に、リベリアの治安機関は政権を維持するためのツールとして利用されてきました[3]。政権維持のためなら国民の迫害も厭わず、国民にとっては恐怖の存在だったのです。テイラー政権期にはLNPにNPFLのメンバーが多数在籍しており、LNPは頻繁に政治的に利用された上、市民を弾圧しました[4]。中には、テイラー自ら結成した殺人、拷問、レイプ等の残虐行為を行うことで知られる部隊「反テロユニット」 (Anti-Terrorist Unit) も存在しました[5]。また、過去の政権が保身のために独自の治安組織を結成した結果、内戦終結時には約16もの治安機関が存在していたと言われているほか、それらは首都に集中する一方で、地方部にはほぼ皆無の状態でした[6]。アフリカ特有の部族主義に根差した問題としては、政権幹部の出身部族を治安機関の有力役職に就ける習慣が横行し、組織としての説明責任能力やパフォーマンス低下の要因となっていました[7]。こうした負の遺産を引き継いだ警察は紛争終結後も機能不全状態であったため、国内では強盗やジェンダーに基づく暴力 (Sexual and Gender-Based Violence: SGBV) 等の犯罪が頻発しており、内戦再発の可能性すらある緊張状態が続いていました[8]

UNMILによる警察組織再編支援

 国連による支援は、2003年の包括和平合意で示されたLNP再編の必要性と、国連安保理が決定したUNMILの任務にLNPの再編及び能力強化支援が明記されていたこと等を根拠に行われました[9]。以下では、UNMIL及びその指揮下で活動していた国連警察 (UNPOL) がLNPの組織再編のために行った取組を概説します。
 UNMILはまず既存の警察組織を解体し、ゼロから組織の再編に着手しました。UNMILとリベリア政府が設定した警察官の応募資格は、18~35歳のリベリア国民であること、高校卒業以上、国際法に抵触する犯罪歴がないこと等でした[10]。また、政権による警察の政治利用を回避するため、応募者は全ての政治役職の放棄が求められました。更に、政府は警察官の募集や昇進にあたっての部族間の平等性を推進し[11]、特定の部族が優遇されないよう努めました。別途身辺調査も実施した上で警察官が選出されましたが、正式に警察官として採用されるのは2年間の試用期間を終えてからであり、選考プロセスとしては比較的厳正なものであったと評価できます。
 警察官の能力強化支援の一環として、UNPOLはドナー諸国の支援を受けて、2004年に国家警察訓練アカデミー (National Police Training Academy: NPTA) を設立しました[12]。選出された警察官はNPTAにてUNPOLらが作成した研修科目 (リーダーシップ、マネジメント、人権、指揮系統、通信、犯罪捜査、地域パトロール等) を受講するとともに、UNPOL警察官との共同パトロール等の実技訓練をはじめとする訓練を積み重ねました[13]。2007年以降、LNPはUNPOL指導教官の支援なしで訓練を実施できるようになり、ローカルオーナーシップに基づいた持続可能な訓練基盤の確立に成功したと言えます。
 UNPOLは、LNP内部の監視体制の強化も支援しました。内戦期から、LNPの警察官による人権侵害行為の不処罰が横行していたため、国民の警察に対する信頼は失墜していました。そうした警察官の規律を正す内部統制部門として、Professional Standard Division (PSD) が新設されました[14]。PSDは市民からの警察官による違法捜査や犯罪行為の報告を受け、内容を調査し、要すれば該当する警察官を処罰できる権限を持っています。2009年には、警察官の不正行為履歴をデータベースで管理できるシステムの導入も支援しました[15]。PSDは地方にも活動範囲を拡大するなどして、地域住民が事案を報告し易い環境の整備に努めてきた結果、報告件数が増加したほか、調査に基づいた警察官の免職や職務停止等の厳正な処置が取られています[16]。こうした組織の透明性及び説明責任能力の向上を目指す取組は、警察の信頼回復の一助となっていると評価できるでしょう。

ジェンダーに配慮したSSRアプローチ

 内戦期からSGBVはリベリア国内の主要犯罪の1つとなっており、多くの女性や少女が被害に遭ってきました[17]。SGBVの被害者は、事件が公になることで、社会的屈辱や差別を受けることを怖れて警察に通報したがらず、通報を受けた警察官も対応方法を熟知していませんでした。女性警察官の絶対数が少ないという点も、被害女性は異性に対し事件の詳細を話すことに抵抗がありがちなので、通報を阻む要因となっていました[18]
 SGBV事案への対応として、UNMILは国連児童基金 (UNICEF) と協働で、2005年にLNP内に女性及び子ども保護ユニット (Women and Children Protection Unit: WCPU) を新設し、住民がSGBV、家庭内暴力、幼児虐待等の事案を通報できる専用窓口を整備しました[19]。UNPOLとUNICEFは、WCPUに配属される警察官に対し必要な研修を行い、その後当該警察官は国内全15郡の警察署に配置され、上記のような被害を訴える女性や少女の保護、情報の収集、捜査、司法機関との連携等を行います[20]。また、学校訪問、地域会合への参加、ポスター作成等を通じた啓発活動の結果、国民の間でSGBVは警察に通報するべき犯罪であるとの理解が広まりつつあります。今後もLNP等が中心となって、リベリアの社会規範を変革する重要な活動として継続される必要があるでしょう。
 同年、UNMILのジェンダーアドバイザー室 (Office of Gender Adviser: OGA) とUNPOLが策定したジェンダー政策では、LNPに占める女性警察官の割合を15%に増やす目標が打ち出されました(2008年には20%に引き上げ)[21]。その一方で、LNPの応募資格の1つは高校を卒業していることでしたが、内戦の影響もあって多くの女性は教育機会を奪われたため、応募したくても応募資格を満たさないケースが後を絶ちませんでした。そこで2006年、LNPが中心となって、女性が警察官への応募資格を得るために高校卒業資格を取得できる教育支援プログラム (Educational Support Programme: ESP) を開始した結果、女性警官の割合は増加に転じ[22]、2018年3月時点ではLNP全体の約19% (全体5053名の内959名) [23]にまで上昇したのです。ESPの効果は確実に表れており、国民の信頼回復にも貢献しているとされています[24]
 ジェンダー分野におけるUNMILのもう1つの貢献は、女性のみで構成されたインドの組織警察隊 (Formed Police Unit: FPU) の配置です。彼女らはFPUの通常任務以外に[25]、女性ならではの取組として地域住民を対象にレイプ予防に関するセミナーを開催するなどして、SGBVの抑止力として活躍しました[26]。同FPUが活動する地域の女性からは、彼女らによるパトロールのおかげで安心して外出できるようになったといった声が聞かれたほか、学校訪問等を通したLNPへのリクルート活動を支援する姿を見た多くの若い女性が、警察を含む治安機関への就職に関心を持ち始めたとも言われています。このようにインドFPUの女性警官らはリベリア人女性にとってのロールモデルとなったのみならず、女性の国連平和活動への参画促進を訴えた国連安保理決議第1325号[27]を具現化させたグッドプラクティスとしても広く知られています。

 
メダル授与式に参加するインドFPU隊員 (Photo Credit: UN Photo/ Christopher Herwig)

地方における「司法・治安地域ハブ」の設置

 上述の通り、リベリアの治安機関は警察も含めて首都に過度に集中し、地方における機能は限定的でした。そこで2011年、リベリア政府はUNMIL等とともに、サービスの地方への分散を図るため、地方5か所に「司法・治安地域ハブ」(Justice and Security Regional Hub) の設置を決定しました[28]。これは画期的なアイデアで、警察官、検察官、公選弁護人、刑務官、保護観察官、人権監視員、SGBV被害者支援担当官、渉外担当官等を一か所に勤務させ、治安と司法部門の連携を強化し、地域住民に対して円滑で包括的なサービスを提供するというものです。2013年にリベリア中央部のボン郡に第1号のハブ がオープンしましたが、後に設置されたハブも地方の住民に対して迅速なサービスを提供し、治安機関に対する信頼回復のために機能することが期待されています。

警察サービスの更なる質の改善に向けて

 UNMILによる警察改革支援は、政権による警察の政治利用や特定部族に対する優遇回避の努力、警察官の規律維持のための内部統制の強化、SGBV被害者を保護する体制の整備、地方における治安サービスの向上等、LNPが抱えていた問題点を解決すべく進められました。しかし、今日でも課題は山積しています。依然として警察官の汚職は横行しており、国民からの信頼は十分に回復できていません[29]。また、LNPは慢性的な予算、人員、装備等の不足に悩まされており、必要なサービスを効果的に提供できていないことも、住民の不信感の解消を阻んでいます。地方におけるリソース不足も依然顕著で、多くの住民が非公式の治安組織やブローカーに問題の解決を依頼しているのが現状です[30]。UNMILは2018年3月に任務を終えてリベリアから撤退しましたが、警察改革支援は国連開発計画 (UNDP) 等に引き継がれ、現在も中長期的な開発の観点から支援は継続されています。

 

[1]  Nilsson, Desirée, and Kovacs, Mimmi Söderberg. 2005. “Breaking the Cycle of Violence? Promises and Pitfalls of the Liberian Peace Process.” Civil Wars 7(4): 396-414, 398. ドウ政権は、独裁的で、腐敗にまみれており、長年の経済不況の原因となっていると批判されていました。

[2]  Renda, Luca. 1999. “Ending Civil Wars: The Case of Liberia.” The Fletcher Forum of World Affairs 23(2): 59-76, 62.

[3]  Zanker, Franzisca. 2015. “A Decade of Police Reform in Liberia: Perceptions, Challenges and Ways Ahead.” SSR 2.0 Brief Issue No.4. Centre for Security Governance.

[4]  Ebo, Adedeji. 2005. “The Challenges and Opportunities of Security Sector Reform in Post Conflict Liberia.” Geneva Centre for the Democratic Control of Armed Forces (DCAF). Occasional Paper No.9, 20.

[5]  Bacon, Laura. 2015. “Liberia’s Gender Sensitive Police Reform: Improving Representation and Responsiveness in a Post-Conflict Setting.” International Peacekeeping 22(4): 372-397, 373.

[6]  Zanker, “A Decade of Police Reform in Liberia,” 2.

[7]  Podder, Sukanya. 2013. “Bridging the ‘Conceptual-Contexual’ Divide: Security Sector Reform in Liberia and UNMIL Transition.” Journal of Intervention and Statebuilding 7 (3): 353-380, 360.

[8]  Friedman, Jonathan. 2011. “Building Civilian Police Capacity: Post-Conflict Liberia, 2003-2011.” Innovations for Successful Societies, Princeton University, 3.

[9]  CPAではリベリア軍 (Armed Forces of Liberia: AFL) の再編は米政府に依頼すると示されていたことを受け、同政府は米系民間軍事会社DynCorp社に業務委託し、既存の治安部隊の解体、隊員の募集、選定、訓練、装備の供与等を行いました。本稿ではAFLの改革についての分析は行いませんが、ご興味ある方はMalan, Mark. 2008. “Security Sector Reform in Liberia: Mixed Results from Humble Beginnings.” Strategic Studies Institute (pp.26-46) 等をご参照下さい。

[10]  Friedman, 5. 応募基準には批判もありました。例えば紛争で学校が破壊され、過去の生徒の在籍情報が消失し、高校卒業証明書の提出は困難であること、警察組織内に犯罪歴の記録がほぼ存在しないため、応募者の犯罪歴も確認できない、組織再編のために現職のベテラン警官さえも失職させることは敬意を欠いている等の批判がありました。

[11]  Blair, Robert and Karim, Sabrina and Gilligan, Michael J. and Beardsley, Kyle C. 2019. “Policing Ethnicity: Lab-in-the-Field Evidence on Discrimination, Cooperation, and Ethnic Balancing in the Liberian National Police,” 16.

[12]  Ibid, 221. ノルウェーやオランダは校舎設立のための資金提供、ベルギーは訓練に必要な小火器等を供与しました。

[13]  United Nations Mission in Liberia. 2018. “Establishing Policing to Serve Communities: Simon Blatchly, Police Commissioner.” Accessed 18 May 2020. (https://unmil.unmissions.org/establishing-policing-serve-communities-simon-blatchly-police-commissioner)

[14]  International Security Sector Advisory Team (ISSAT). 2018. “Liberia SSR Snapshot.” Accessed 18 May 2020. (https://issat.dcaf.ch/Learn/Resource-Library2/Country-Profiles/Liberia-SSR-Snapshot)

[15]  United Nations. 2010. “Twenty-first progress report of the Secretary-General on the United Nations Missions in Liberia” (S/2010/429). New York: UN Security Council.

[16]  International Security Sector Advisory Team (ISSAT). 2018. “Lessons Identified from United Nations Mission in Liberia Support to Rule of Law in Liberia.” Geneva: DCAF.

[17]  Bacon, “Liberia’s Gender Sensitive Police Reform,” 373.

[18]  Ibid, 376.

[19]  United Nations Mission in Liberia (UNMIL) Office of the Gender Adviser (OGA). 2009. “Gender Mainstreaming in Peacekeeping Operations in Liberia 2003-2009: Best Practices Report,” 34.

[20]  Bacon, 378. 当然ながら、警察組織のSGBVへの対応能力を強化するだけでは不十分で、逮捕した犯人を法的に裁くキャパシティも必要となります。そこで、司法省にSGBV犯罪ユニット (SGBV Crimes Unit) が新設され、警察と検察間の調整、検察官に対するSGBV案件の対処に関する研修等を担わせました。更には、犯罪法廷E (Criminal Court E) と呼ばれるSGBV案件専門の法廷も設置され、被害者や目撃者が容疑者とは別の部屋で証言できる工夫もされました。

[21]  UNMIL OGA, 19.

[22]  Ibid, 21.

[23]  United Nations. 2018. "Final progress report of the Secretary-General on the United Nations Mission in Liberia" (S/2018/344). New York: UN Security Council.

[24]  Bacon, 381. ESPは女性警察官の割合増加の一助となった一方で、人数を増やすことばかりに注力したため、能力の高い人材を採用することは結果的に後回しになってしまい、また、内戦で教育機会を奪われたのは女性だけでなく男性も同様であったにも関わらず、女性のみに教育機会を提供するのは不公平だと指摘する見方もあります。

[25]  FPUはUNPOLの活動部隊の1つで、1部隊約140名の警察官で構成されており、公共秩序の維持や国連職員、関連施設の保護が通常任務となります。詳しくは@PKOなう!第102回「国連警察 (UNPOL) の概要と国連平和活動における役割」をご参照下さい。

[26]  UNMIL OGA, 43.

[27]  United Nations. 2000. Resolution 1325 (2000) (S/RES/1325). New York: UN Security Council.

[28]  Ministry of Justice Republic of Liberia. 2016. Justice and Security Joint Programme Accessed 22 May 2020. (http://moj.gov.lr/about/jsjp/).

[29]  Zanker, “A Decade of Police Reform in Liberia,” 5.

[30]  Podder, “Bridging the ‘Conceptual-Contextual’ Divide,” 364.